計画研究
1)組換え抑制を招く性スペクトラム関連遺伝子の同定(i)性決定遺伝子座周辺の参照ゲノム配列の完成:ブリ性決定遺伝子座周辺には組換え抑制が発達している。この組換え抑制をひきおこした進化的メカニズム(性的拮抗遺伝子座の有無)および抑制維持の分子メカニズム(逆位が原因か否か)を解析するためには、ZとWの参照ゲノム配列が必須である。これまでにZの参照配列は決定していたが、Wの配列がなかった。そこで、ホルモン投与により人為的に作出したブリWW型個体を材料として、昨年度までに最適化した「長鎖ターゲットエンリッチメント法」を用いて、参照ゲノム配列の構築を試みた。その結果、ブリWの参照配列を作製することができた。(ii)多数個体のハプロタイプフェージング:本プロジェクトでは、多数個体に由来するZ染色体配列とW染色体配列が必要となる。しかし、上記の長鎖エンリッチメント法が多数個体の低被覆度解析には適していないことが判明したため、通常のPCRをエマルジョン法に置換することを試みた。改変後に得られた長鎖データのアセンブルをおこなったところ、データ被覆度の領域依存的なバラツキは大きくは改善されず、エマルジョンPCRの有効性は確認できなかった。2) 換え抑制をつくりだすエピゲノム構造変化の解明ブリZとWの配列を比較したところ、明瞭な逆位の痕跡はみつからなかった。慎重な確認実験が今後も必要ではあるものの、組換え抑制が逆位以外のメカニズムで生じている可能性が高まった。3)組換え抑制領域の拡大に伴う遺伝子発現変動組換え抑制の有無が遺伝子発現におよぼす影響を明らかにするための第一歩として、組換え抑制が未発達のカンパチについて、生殖腺のRNA-seq解析をおこなった。データ全体の分析は終えていないが、性決定遺伝子についてはそのアリル特異的な発現を解析した。
2: おおむね順調に進展している
1)組換え抑制を招く性スペクトラム関連遺伝子の同定については、想定以上に進展している。一方で、2) 換え抑制をつくりだすエピゲノム構造変化の解明については、成長段階にそって経時的に得た生殖巣冷凍保存サンプルが、2018年9月30日夜から3日間続いた浜松大停電により融解したため、進捗が遅れている。
1) 組換え抑制を招く性スペクトラム関連遺伝子の同定(i)これまでに、①分化が進んだZおよびW染色体と③分化していない性染色体の参照配列を得ることに成功した。今年度は、②分化がわずかにすすんだ性染色体(ZおよびW)の参照配列を決定する。(ii)組み換え抑制を招いた遺伝子を集団遺伝学的手法により同定するためは、多数のZ染色体(Z集団)とW染色体(W集団)が必要となる。W染色体の配列は通常の2倍体個体から得られないため、雌性発生法により①W型およびZ型ハプロイドをそれぞれ15個体作出し、これの全ゲノムシーケンシングをおこなう。得られた2集団間の遺伝的分化を解析し、W染色体上に存在する可能性がある組み換え抑制促進遺伝子(雌に有利な遺伝子)の候補を探索する。2) 組換え抑制をつくりだすエピゲノム構造変化の解明性決定遺伝子座の組換え抑制とヘテロクロマチン化の関連を明らかにするため、パキテンキ期卵母細胞の取得に最適な時期を昨年度から探索している。本年度はSYCP抗体を利用して、パキテンキ期の卵母細胞数が最大化するステージを同定する。また、一細胞解析技術の適用に向けた、材料調整の最適化をおこなう。3)組換え抑制領域の拡大に伴う遺伝子発現変動種間比較を厳密におこなうためには成長軸に沿って多数のサンプリングポイントをとる必要がある。さらに、組み換え抑制領域にある遺伝子の発現組織が多岐にわたるため、それぞれの組織でトランスクリプトームを得なければなければならない。こういった多数サンプルの解析を通常のRNA-seqでおこなうことは、費用の面から現実的でないいため、Uniqu Molecular Identifierを合成・利用して、多数サンプルのトランスクリプトームを一挙に取得する。
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Scientific Reports
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
NIPPON SUISAN GAKKAISHI
巻: 85 ページ: 187~187
https://doi.org/10.2331/suisan.WA2603-3
巻: 85 ページ: 188~188
https://doi.org/10.2331/suisan.WA2603-4
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https://doi.org/10.2331/suisan.WA2603-1
PLOS ONE
巻: 13 ページ: e0190635
10.1371/journal.pone.0190635