計画研究
1) 組換え抑制を招く性スペクトラム関連遺伝子の同定. 以下では、性染色体間の分化の度合いが高い・低い・ない魚類(それぞれA種、B種、C種とよぶ)研究材料としている。(i)2019年度は、B種のZおよびW染色体の参照配列を決定できた。(ii)組み換え抑制を招いた遺伝子を集団遺伝学的手法により同定するためは、多数のZ染色体とW染色体が必要となる。雌性発生法によりA種のW型およびZ型ハプロイドをそれぞれ15個体作出し、これの全ゲノムシーケンシングをおこなった。得られた2集団間の遺伝的分化を解析したところ、性決定遺伝子の近傍に深い分岐を示す遺伝子が存在することがわかった。この遺伝子が、組み換え抑制を促進した可能性を今後検討する。別途、組み換え抑制領域の中心にある、性決定遺伝子本体の同定にも成功した。さらに、既存法の改変により、比較的容易に新規性決定遺伝子座を同定する手法を開発した。2) 組換え抑制をつくりだすエピゲノム構造変化の解明. (i)一細胞解析技術の適用に向けて、最適化を試みた。遺伝子発現に関しては、自作デバイスを用いたDrop-seq法の適用により、比較的安価に5000STAMP/450Mリードを解析できた。3)組換え抑制領域の拡大に伴う遺伝子発現変動. (i)種間比較を厳密におこなうためには成長軸に沿って多数のサンプリングポイントをとる必要がある。さらに、組み換え抑制領域にある遺伝子の発現組織が多岐にわたるため、それぞれの組織でトランスクリプトームを得なければなければならない。こういった多数サンプルの解析は通常法では、費用の面から現実的でないいため、Uniqu Molecular Identifierを合成・利用して、多数サンプルのトランスクリプトームを一挙に取得する手法の導入に取り組んだ。その結果、約300個のサンプルについて、データを取得することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
1) 組換え抑制を招く性スペクトラム関連遺伝子の同定において、性決定遺伝子の近傍に、性染色体集団間で深い分岐を示す遺伝子を同定できたことは、論文化にはまだ時間を要するものの、大きな成果であった。また、本染色体のDNA配列解析の過程で新規性決定遺伝子を発見できたこと、そしてその成果を出版できたことも大きな成果であった。
1) 組換え抑制を招く性スペクトラム関連遺伝子の同定. 以下では、性染色体間の分化の度合いが高い・低い・ないブリ属魚類(それぞれA種、B種、C種とよぶ)研究材料とする。昨年、分化が進んだA種の解析において、性決定遺伝子近傍にZとW間での分化が進んだ遺伝子が見つかった。この分化が何らかの選択を仮定しなければ説明できないものか、偶然によって生じ得るものかを判断するためは、シュミレーションが必要となるが、これに適したプログラムは現在存在しない。そこで今年は、このシュミレーターを開発する。また、B種においても、A種と同様の全ゲノム集団遺伝学的解析をおこなう。2) 組換え抑制をつくりだすエピゲノム構造変化の解明. パキテンキ期卵母細胞の解析に適した手法のひとつは一細胞解析技術であると考えている。この解析が比較的低コストで可能となるDrop-seq技術を昨年導入した。本年度は、これを活用した解析を進める。具体的には、ブリ類の生殖腺を材料とした一細胞解析をおこない、パキテン期生殖祭細胞の分化程度の高いA種に特異的なエピゲノム構造変化を捉える。また、SYCP抗体を用いたパキテン期細胞の同定も進める。3)組換え抑制領域の拡大に伴う遺伝子発現変動. 種間比較を厳密におこなうためには成長軸に沿って多数のサンプリングポイントをとる必要がある。さらに、組み換え抑制領域にある遺伝子の発現組織が多岐にわたるため、それぞれの組織でトランスクリプトームを得なければなければならない。この問題を解決するため、多数サンプルのトランスクリプトームを一挙に取得する手法を、昨年導入した。今年度は、成長軸に沿って、これまでよりはるかに時間粒度が高い解析をおこない、組み換え抑制領域における遺伝子発現量を種間および性染色体間(ZとW)で比較する。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
Current Biology
巻: 29 ページ: 1901-1909
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Molecular Ecology Resources
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https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20190605-1.html
http://www.se.a.u-tokyo.ac.jp/japanese.html