計画研究
多くの生物種の性染色体は、組換え抑制が原因で異形化している。この組換え抑制のトリガー(進化要因)は、性決定遺伝子近傍に存在する「オス化やメス化の程度を変える遺伝子」(性スペクトラム上の位置定位に関わる遺伝子)であると推測されてきた。しかし、モデル生物の性染色体は異形化が進みすぎているため、この仮説の検証は不可能である。本研究は、異形化前後の染色体をもつと予想される魚類の近縁種群を材料として、性染色体進化の初期過程を解明することを目的とした。ブリ類3種の詳細なゲノム配列解析を行い、これらが、組換え抑制前後の性染色体をもつことを見いだした。すなわち、1種では組換え抑制はまったく観察されず、1種では600kbの組換え抑制領域が観察され、最後の1種では組換え抑制の兆候がわずかに検出された。これまで、性染色体中の逆位が組換え抑制の主要因とされてきたが、これら種には逆位が認められず、新規の組換え抑制機構が存在する可能性が示された。また、上記600kbの組換え抑制領域の中に、メス特異的に働く可能性が高い変異が生じており、これが平衡選択によって維持されていることも明らかとした。性特異的な優性効果が、組換え抑制をもたらした進化要因である可能性が示された。さらに、上記の研究過程において、ブリ類の性決定遺伝子がステロイド代謝酵素であることを明らかとした。これは、20世紀前半より提唱されていながら決定的な証拠が得られていなかった「性のステロイド誘導説」を強く支持する結果であった。一方で、フグ類が、ゲノム中を動き回る性決定領域を持つことも見いだした。性決定領域に「オス表現型に関与する遺伝子」(性スペクトラム上の位置定位に関わる遺伝子)が集積してしまったがゆえに、組換え抑制領域が発達しやすくなり、その有害作用のせいで性決定遺伝子が動き回ざるをえなくなったという仮説を提唱した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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PNAS
巻: in press ページ: xxxx~xxxx
eLife
巻: 10 ページ: e66954~e66954
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Molecular Biology and Evolution
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