研究実績の概要 |
本年度の代表的成果は、下記のとおりである。 (1) 非閉塞性無精子症男性患者40例を対象に既知疾患原因遺伝子の網羅的シークエンスとゲノムワイドコピー数解析を行い、4例に疾患に関連すると推測される遺伝子内塩基置換、1例にY染色体構造異常を同定した。さらに多数の症例で疾患への関与の有無が不明の塩基置換を同定した。本研究によって既知遺伝子変異の寄与の程度が明らかとなり、また本症がoligogenic disorderとして発症することが見いだされた。現在同定された塩基置換の病的意義の検討を行っている。 (2)非閉塞性無精子症男性131例のシークエンス解析を行い、1例においてホモ接合性STX2フレームシフト変異を同定した。変異陽性患者では、既報のStx2ノックアウトマウスと同様に多核化細胞を伴う胚細胞成熟障害が確認された。これによってSTX2がヒト無精子症の新規原因遺伝子であり、本遺伝子機能喪失が特徴的組織学的変化を招くことが明らかとなった。 (3)NR5A1 p.R92W変異に起因する46,XX 精巣性/卵精巣性性分化疾患3例の表現型について検討した。本症患者の男性化には症例間差異が大きく、一部の症例では男性としての性自認と性成熟進行を認めることが明らかとなった。また、精巣においてセルトリ細胞とライデッヒ細胞の形成が認められることを確認した。 (4)外性器異常を呈する男児1例で46,XY/46,Xdic(Y)/45,X核型を同定した。このdic(Y)はP1パリンドローム間で形成されたものであった。この結果は、Y染色体特異的パリンドロームの存在が、受精後の体細胞分裂時におけるモザイクY染色体喪失に関与する可能性を示唆するものである。
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