計画研究
FeSPニューロンが出現・消失するメカニズムを明らかにする目的で、同ニューロンで性ステロイドの制御下で発現しているRNAポリメラーゼの修飾に関わる遺伝子、分泌顆粒への輸送に関わる遺伝子、ペプチダーゼ遺伝子に着目し、それらの発現解析を進めた。その結果、それらの遺伝子が確かに性ステロイドの制御下でFeSPニューロンで発現していることが明らかとなったとともに、それらの遺伝子の産物に対する抗体を作製し、タンパク質レベルでもそれらの遺伝子がFeSPニューロンで機能していることを確認した。また、性ステロイドがどのようなメカニズムでそれらの遺伝子の発現を制御しているのかを調べたが、いずれの遺伝子についても、性ステロイドによって転写が直接制御されている証拠は得られなかった。メスのメダカの卵巣でどのような種類の性ステロイドが合成されているのかをLC-MS/MSで調べた。その結果、わずかながら11ケトテストステロンとジヒドロテストステロンが合成されていることが明らかとなった。メダカでは、FeSPニューロンでも発現しているエストロゲン受容体Esr2bをノックアウトするとオス型の性行動が誘導されるが、それは、卵巣からわずかに放出されるこれらのアンドロゲンによると考えられた。また、Esr2bノックアウトメスの脳内で、他のエストロゲン受容体やアンドロゲン受容体の発現が変化しているかを検証したところ、特に変化がないことが分かった。このことから、Esr2bノックアウトメスでみられた表現型は、他のエストロゲン受容体やアンドロゲン受容体の活性が変化したことによる二次的なものではないことが示唆された。これらの結果を、前年度までに得られた結果と合わせ、FeSPニューロンでのEsr2bの作用と性行動に関する論文として出版した。
3: やや遅れている
新型コロナウイルスの感染拡大により緊急事態宣言が発令されたことに伴って、しばらく研究室が閉鎖され、研究活動も停止を余儀なくされた。そのため、研究の進展が予定よりもやや遅れてしまった。
新型コロナウイルスへの感染防止対策をしっかりと行いつつ、遅れを取り戻すべく研究に取り組んでいく。特に、FeSPニューロンで性ステロイドの制御下で発現しているRNAポリメラーゼの修飾に関わる遺伝子、分泌顆粒への輸送に関わる遺伝子、ペプチダーゼ遺伝子の発現解析と機能解析を精力的に進めていく。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
Current Biology
巻: 31 ページ: 1699-1710
10.1016/j.cub.2021.01.089
eLife
巻: 9 ページ: e59470
10.7554/eLife.59470
Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences
巻: 287 ページ: 20200713
10.1098/rspb.2020.0713