研究領域 | 性スペクトラム - 連続する表現型としての雌雄 |
研究課題/領域番号 |
17H06431
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
勝間 進 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20378863)
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研究分担者 |
木内 隆史 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (60622892)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | ボルバキア / 性決定 / 性スペクトラム / アワノメイガ / Masculinizer / 遺伝子量補償 / doublesex / 性分化 |
研究実績の概要 |
自然界では、古くよりボルバキアをはじめとする寄生体が昆虫の性操作を行うことが知られている。共生細菌ボルバキアは宿主の性や生殖システムを巧みに操作することから「動物界で最も成功している寄生者」といわれている。チョウ目昆虫においては、ボルバキア感染が「遺伝的オスのメス化」や「オス殺し」、「細胞質不和合」を引き起こす。我々は、カイコにおける研究結果をヒントにして、ボルバキアが宿主のMasc遺伝子の発現を低下させることで遺伝子量補償機構を破綻させ、「オス殺し」を引き起こしていることを明らかにした。しかし、ボルバキアがもつMasc制御因子の同定には至っていない。本研究では、寄生者であるボルバキアがいかにして宿主の性スペクトラム上の位置を撹乱し、個体の性を制御するのかを解明する。平成29年度は以下の研究を行った。 1. 「オス殺し」ボルバキア感染アワノメイガ胚子、非感染胚子、および抗生物質処理によりボルバキアを取り除いた胚子を材料として、小分子RNAの解析を行った。その結果、ボルバキアによるMasc遺伝子の発現制御には小分子RNAは関与しないと考えられた。さらに、アワノメイガメスにおいても、同様に、Mascの発現制御に小分子RNAは関与しないことが示唆された。 2. 小分子RNA-seqと同じソースを用いて、ribo-zeroを用いたRNA-seqを行った。そこから、ボルバキア由来だと考えられる配列を選択した。 3. アワノメイガにおいて、個々の胚子を単離して雌雄鑑別する実験系を構築し、RNAiによるMascノックダウン実験を行った。ノックダウンによってオス胚子におけるdsxスプライシングがメス型に移行したことから、アワノメイガにおいてもMascはオス化因子であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ボルバキア「オス殺し」遺伝子のスクリーニング系が確立していないため。
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今後の研究の推進方策 |
カイコ由来の培養細胞を用いてスクリーニング系の構築を開始したが、カイコとアワノメイガで性決定機構が異なる可能性があるため、カイコ培養細胞での実験系の作成と並行して、アワノメイガから培養細胞を作成することを試みる。
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