計画研究
自然界では、古くよりボルバキアをはじめとする寄生体が昆虫の性操作を行うことが知られている。共生細菌ボルバキアは宿主の性や生殖システムを巧みに操作することから「動物界で最も成功している寄生者」といわれている。チョウ目昆虫においては、ボルバキア感染が「遺伝的オスのメス化」や「オス殺し」、「細胞質不和合」を引き起こす。我々は、カイコにおける研究結果をヒントにして、ボルバキアが宿主のオス化と遺伝子量補償を担うMasc遺伝子の発現を低下させることで遺伝子量補償機構を破綻させ、「オス殺し」を引き起こしていることを明らかにした。しかし、ボルバキアがもつMasc制御因子の同定には至っていない。本研究では、寄生者であるボルバキアがいかにして宿主の性スペクトラム上の位置を撹乱し、個体の性を制御するのかを解明する。今年度は以下の成果を得た。・アワノメイガMasc(OfMasc)のN末端に結合するボルバキアタンパク質をLC-MS/MSを用いて同定し、この因子をOscarと命名した。OfMasc変異体を用いた解析から、Oscarとの結合はOfMascに存在する2つのZinc Fingerのうち1つ目が強く関与していることが明らかになった。・アワノメイガ、ツマジロクサヨトウ、カイコの培養細胞を用いた実験から、OscarはOfMascに誘導されるオス型doublesexの発現を阻害することを明らかにした。アワノメイガ以外のチョウ目昆虫のMascを用いた解析から、Oscarはチョウ目昆虫において共通してオス殺しを誘導する可能性が示唆された。さらに、アワノメイガ、およびカイコ胚子を用いた解析から、Oscarの発現によってオス化抑制とオス殺しが誘導されることが示された。以上の結果から、Oscarが探し求めたオス殺し因子であると結論した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
Methods Mol Biol
巻: 2360 ページ: 19, 31
10.1007/978-1-0716-1633-8_3
Nat Commun
巻: 12 ページ: 4498
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https://sites.google.com/view/igblab-ut-aba