計画研究
本研究はカメ及びワニを始めとする爬虫類の温度依存型性決定をモデルとして、温度環境シグナルを受容した後、そのシグナルがどのように生体内シグナルに変換され、性決定・分化の実行因子が作用するか、性決定過程の全容を明らかにする。複数の動物種の性決定のシグナリングカスケードを比較解析することで、環境依存型性決定の分子機構の包括的な理解を図る。平成29年度はRNAseqの解析を進めた。クサガメはドラフトゲノムが存在しないためTrinityを用いて解析した。その結果、脊椎動物の性決定への関与が示唆されているlysine demethylaseの一種であるKDM6Bや、カミツキガメの性分化への関与が示唆されているcold inducible RNA binding protein (CIRBP)がなどを雌雄産生温度で発現差がある遺伝子として見いだした。また、オスの発生ステージに沿って発現上昇する遺伝子の中には、AMHやDMRT1といった既知のオス性分化遺伝子が含まれていたほか、pantetheinaseと呼ばれるパントテン酸(ビタミンB5)を作り出す遺伝子がA有意に発現変動していることを見出した。我々のグループはこれまでに環境依存型性決定を示すミジンコのオス性決定因子としてパントテン酸を見出しており、カメのオス性決定にもpantetheinaseを介したパントテン酸の蓄積が関与しているのかもしれない。また、各種TRPチャネルのアゴニストあるいはアンタゴニストを温度感受期にあるクサガメの卵に塗布し、その性比の変動を遺伝子マーカーでかいせきしたところ、ある薬剤によって遺伝子マーカーの発現が変動することを見出し、このTPRがカメの温度依存型性決定に関連するTRPタンパクであることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
カメの雌雄性決定に関与する温度域で活性化されるTRPチャネルについては、in vivoの解析によって同定しつつある。また、トランスクリプトーム解析のランを終え、我々が以前行ったワニのトランスクリプトームとも比較しながら解析を順調に進めている。一方で研究代表者が所属変更することなどもあり、メタボローム解析は顕著な雌雄差を本年度のサンプルでは見出すに至らなかったが、全体としては概ね順調に進展していると判断した。
昨年度の解析で明らかとなったカメの温度依存型性決定に関与するTRPについて電気生理学実験や、in vivo実験、器官培養実験などを駆使して、詳細な機能解析をおこなう。さらに、カメの様々な発生段階におけるRNA-seq解析のほか、メタボローム解析も行うほか、それらのオミクス解析に基づく機能解析を実施するために、カメの生殖腺から株細胞の樹立を試みる予定である。
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