研究領域 | 光合成分子機構の学理解明と時空間制御による革新的光ー物質変換系の創製 |
研究課題/領域番号 |
17H06438
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
野澤 俊介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (20415053)
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研究分担者 |
山下 晃一 京都大学, 実験と理論計算科学のインタープレイによる触媒・電池の元素戦略研究拠点ユニット, 特任教授 (40175659)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 人工光合成 / X線自由電子レーザー / 可視化 / 動的構造解析 / 再生可能エネルギー / XAFS / 量子ビーム / 光触媒 |
研究実績の概要 |
本年度は、まず、X線自由電子レーザーを用いた光化学反応の可視化技術について大きな発展があった。 これまでは3つの原子と2つの結合を含む単純な反応(A+B+C→A-B-C)の場合でも、波束の時間依存位置を多次元核座標の関数として実験的に決定することは困難だったが、金三量体錯体の光誘起結合形成をモデルとして、フェムト秒X線散乱を使用し、フランクコンドン(FC)領域から始まり、平衡構造に発展する波束振動の時間依存位置を明らかにした。核座標で決定された波束軌道によって、FC領域の位置と非同期結合形成の反応メカニズムを直接視覚化することが可能となった。これは、量子計算によって提供される振動周波数が無くても、波束軌道を実験的に観測することで、光反応過程の振動モードを明確に割り当てることができることを意味する。 また、X線自由電子レーザー施設においてタンパク質微結晶の電子構造と構造情報を同時に取得することを目的として、超高速ポンププローブ実験専用の実験システムが開発された。このシステムは1 atmのヘリウム圧力で動作するチャンバー、2つのVon Hamos分光計、3つのX線2次元検出器で構成されている。テスト実験から、時間分解X線吸収分光、時間分解X線発光分光、時間分解X線散乱のデーターの同時取得が実証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、時間分解X線測定を利用して、天然-人工光合成研究の架け橋となるような共同研究を領域内で展開することを目標としている。 本年度も、領域内で開発された人工光合成系サンプルに対して、計画班間共同研究を4件、公募班との共同研究を8件実施してきており、当初の計画は概ね順調に進展している。 多様な共同研究を実施するために、室温では不安定な生成物を測定するための低温反応用セルの開発や、電気化学反応のin situ測定システム、嫌気条件下での測定に対応したヘリウムセルなどの開発を行った。
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今後の研究の推進方策 |
更に多くの領域内共同研究を遂行するために引き続き測定システムの改良を続ける。 まず、詳細な光学測定との比較研究を実施するため、X線-可視光分光同時計測システムを構築する予定である。サンプル循環ラインに紫外可視分光光度計を導入し、X線測定中においても常に吸光度を監視することでサンプル状態をモニター出来るようにする。このシステムを用いて、他のプローブの測定とサンプル条件を統一した、精密な相補研究を実施していく。 より高度なin-situ測定を実施するための改良も実施する予定である。放射光のX線実験システムに犠牲試薬とガスの導入を精密に制御するシステムを導入する。このシステムを利用して、実際の光触媒材料反応下における時間分解X線測定を実施していく。
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