計画研究
領域内で新規合成された不均一系光触媒や、電極触媒の時間分解XAFS測定を実施し、触媒反応下における構造・電子状態の変化について可視化することに成功した。またドイツ、韓国の共同研究者と共同でリモート測定を実施し、領域内で合成された光触媒材料の光励起に起因した電子状態変化をフェムト秒の時間スケールで可視化することに成功した。特に本年度は、XFEL で測定可能な時間分解能を約 500 フェムト秒から約 100 フェムト秒へと改善した。原子レベルの空間精度で分子 の構造を可視化できる時間分解 X 線溶液散乱測定と、アライバルタイミングモニターを同時に利用することにより、3 つの分子 2 つの分子間結合が関係する複雑な化学反応であっても、原子の速い動きにより分子結合が形成され、分子の形が変わっていく様子を原子の位置情報として直接観測することができた。これまで、化学反応中における分子構造の変化は、計算によって予想されてきた。また、分子が振動することで、化学反応が進行するというコンセプトも提案されていたが、 実際にそれを原子の位置情報として直接観測した例は無かった。しかし、本研究では、光により化学反応が始まり原子が動き出す瞬間から、分子の構造を正確に追跡することが可能となったため、原子同士が近づいたり離れたりする振動を利用することで、原子の間に次々と結合が生まれ、分子の形が複雑に変化していく様子が直接観測された。本手法を様々な光反応に適用することで、反応を進める原子の動き、反応中の構造変化、化 学反応の速度、たどり着く安定な分子の構造、その化学反応のメカニズム等を直接解明する ことができる。更には、光によって一斉に起きる原子の振動の様子を正確に知ることがで き、光化学反応のメカニズムを視覚的に解明することが可能となった。
2: おおむね順調に進展している
領域内における連携に関して、超高速光学測定との相補的な比較研究を橋本(関西学院大)、恩田(九州大学)、山中(豊田中央研究所)等と進め、石谷(東工大)、工藤(東理大)、井上(首都大)、八木(新潟大)、阿部(京大)、片岡(島根大)等が開発する人工光合成材料や、沈(岡山大)・神谷(大阪市大)が研究する生体試料について測定を順次行なっている。リモートによる、領域会議での打ち合わせや、共同研究グループとの個別な打合せにより、活発な領域内研究が実施されている。
今後も精力的に、領域会議、総括班会議、領域に関連したシンポジウム等を活用して、領域内共同研究を実施していく。また、海外との研究協力で得られた成果を、国際共同研究として順次論文化していく予定である。昨年度は公募班の研究グループとの共同研究を新たに4件スタートさせ、それらは海外研究グループとの共同研究ともなっており、そのうち2件は現在論文投稿中である。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 2件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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