研究領域 | 光合成分子機構の学理解明と時空間制御による革新的光ー物質変換系の創製 |
研究課題/領域番号 |
17H06439
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
阿部 竜 京都大学, 工学研究科, 教授 (60356376)
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研究分担者 |
八木 政行 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00282971)
佐山 和弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 首席研究員 (70357169)
井上 晴夫 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 特任教授 (90087304)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 水素製造 / 人工光合成 / 光触媒 / 水分解 / 可視光 / 半導体 / 金属錯体 / 過酸化水素 |
研究実績の概要 |
人類の持続的発展には、太陽光エネルギーを用い、水素などのクリーンなエネルギーキャリアを合成する光エネルギー・物質変換における技術革新が不可欠である。本研究では、太陽光を利用して「水素」および「過酸化水素」を効率良く生産することを目的に、相補的な性質を有する金属錯体等の「機能性分子系」および金属酸化物等の「無機半導体系」をハイブリッド化して各々の特性を協奏的に向上させた高性能光触媒を開発し、これらを植物の光合成を模倣した「二段階励起型水分解系」に適用し、高効率かつ高選択的な光エネルギー・物質変換系を実証することを目的とする。平成29年度は、各研究機関においてまずはハイブリッド化を念頭に置いた材料開発を進めた。
京都大学では、可視光水分解に有望な光触媒材料として、レニウム系酸化物を初めて見出すとともに、ビスマス系オキシハライド系光触媒の得意なバンド構造の起源を解明し合成法の最適化による高活性化を実証した。さらに二段階励起型水分解系の新規レドックスとしてモリブデン系ポリオキソメタレートが利用可能であることを初めて報告した。 新潟大学では、コバルトオキシ水酸化物ナノ粒子電着膜の電気触媒化学的水の酸化活性を研究した。硝酸カリウムまたは硫酸ナトリウム水溶液中においてCoO(OH)-NPはほとんど触媒活性を示さないが、四ホウ酸ナトリウム水溶液中では高い触媒活性を示すことを見出した。 首都大学東京では、アルミニウムポルフィリン分子触媒の1電子酸化により誘起される水分子からの過酸化水素の生成を見出し、可視光レーザーフラッシュフォトリシスにより反応機構を解明した。 産業技術総合研究所では、水からの酸化的な過酸化水素生成のための触媒開発を進め、正反応の促進に貢献するBiVO4と次酸化分解反応の抑制に貢献するAl2O3の両方を電極上にコートすることにより電流効率が大きく向上することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題において目標としている、太陽光を利用した「水素」および「過酸化水素」製造のための高効率可視光水分解系の開発に関して、これらに用いるための可視光応答型半導体光触媒の新規開発、既存の半導体光触媒の合成法改良や表面修飾による高性能化、さらには水の2電子酸化による選択的な過酸化水素生成のための金属錯体や半導体材料の研究開発が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、各研究項目のさらなる進展を図るともに、本研究課題において目標とする金属錯体等の「機能性分子系」および金属酸化物等の「無機半導体系」のハイブリッド化による「分子・半導体協奏光反応場」の構築に向けて、各研究機関間の連携と強力な共同研究の推進を図る。
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