研究領域 | 分子合成オンデマンドを実現するハイブリッド触媒系の創製 |
研究課題/領域番号 |
17H06442
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金井 求 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (20243264)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | ハイブリッド触媒 / C-H活性化 / 有機金属 / 水素放出 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、豊富な炭素資源であるアルカンを原料として、抗癌剤などの高付加価値な有機分子を実践的に合成できるハイブリッド触媒系の創製である。ハイブリッド触媒系によるアルカンの炭素-水素結合活性化を経る有機金属活性種の発生と分子合成オンデマンドへの展開を計画した。光触媒-ラジカル触媒ハイブリッドによるアルカンからの水素原子の引き抜きと、生じた炭素ラジカルの金属錯体触媒での捕捉により目的の変換を達成する。本研究では、強力な水素原子引き抜き能と迅速な炭素ラジカル捕捉能を兼ね備えたハイブリッド触媒系の創製により課題を克服する。アルカンから生成する有機金属活性種は、位置・立体化学制御をともなう選択的反応への適用が可能で、高付加価値な有機分子を合成するための有用な活性種である。 本年度は、リガンドレス銅触媒とt-ブチルヒドロぺルオキシド、空気中の酸素の組み合わせにより、ベンジル位のsp3 C-H結合をC=O結合へと簡便に変換できることを見い出した。また、電子欠損リガンドを用いることでイリジウム触媒によるベンゼン環C-Hのホウ素化反応がオルト位選択的に進行することを見い出した。さらに、配位子を工夫することでアルデヒドと臭化アリールからケトンを合成できること、ニッケル触媒と光触媒、水素引き抜き触媒の三者混合ハイブリッド触媒系による炭化水素からの水素放出反応を見い出した。特にニッケル触媒を用いた水素放出反応は、来るべき環境調和型社会のエネルギー源供給の基盤となる可能性がある点で評価できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
元素戦略的に有利な汎用金属触媒を用いた炭化水素からの水素放出反応の開発は、将来的に水素社会の基盤となる化学触媒反応へと進展できることを示しており、特にハイブリッド触媒の強みの出た成果であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
上記の水素放出反応を実用的なレベルにまで向上させるために、機械学習を取り入れた更なる最適化を継続する。また、炭化水素を活性化して極性反応を進行させる触媒系の構築に力点を注ぐ。さらにはアルカンの活性化と反応への展開を開始する。
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