研究実績の概要 |
本研究課題では、光あるいは電気化学的刺激により金属錯体触媒を狙い通りに活性化し、生じた活性種を活用した独創的なハイブリッド触媒系の構築を目標としている。この目的を達成するために、課題(1):光/電気化学的刺激により活性種を自在に作り出す手法の開拓、課題(2):光/電気化学的刺激をトリガーとするハイブリッド触媒系の構築、の2つの課題を設定し、研究を行った。 課題(1)に関連し、電気化学的刺激によりオキソ活性種を生成する鉄5核錯体に対し、配位子部位に電子供与性ならびに電子吸引性の置換基を導入した誘導体を新規に合成し、その触媒機能を評価した。どちらの化合物においても、電気化学的酸素発生反応の過電圧の低下がみられた。電子供与性置換基を導入した系においては、活性種生成の電位が低電位側にシフトしていることが確認された。一方、電子吸引性置換基を導入した系では、活性種の電子構造が劇的に変化していることが分かった。以上より、オキソ活性種を低電位で生成させるための2つの異なる戦略が見出された(Chem. Sci., 2019, 10, 4628)。 課題(2)では、光刺激を駆動力とする小分子変換反応に向けたハイブリッド触媒系の創出を試みた。代表的な成果として、ルテニウムイオンにポリピリジン系配位子とホスフィン系配位子が配位した金属錯体を用いることで、反応系中に光捕集サイトならびに触媒活性サイトを共存させた二機能ハイブリッド型の触媒を開発する手法を確立した。その結果、高効率な分子性二酸化炭素還元触媒を創出することに成功した(J. Am. Chem. Soc., 2018, 140, 16899)。
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