研究領域 | 分子合成オンデマンドを実現するハイブリッド触媒系の創製 |
研究課題/領域番号 |
17H06445
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
畑中 美穂 奈良先端科学技術大学院大学, 研究推進機構, 特任准教授 (80616011)
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研究分担者 |
Sameera W.M.C. 北海道大学, 低温科学研究所, 特任助教 (90791278)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 反応経路自動探索 / 密度汎関数法 |
研究実績の概要 |
複数の触媒が協働的に作用するハイブリッド触媒系のメカニズム解明には、反応経路の網羅的探索が不可欠である。本研究では、反応経路を自動的に探索する方法論の一つである「人工力誘起反応法(Artificial Force Induced Reaction:AFIR法)を駆使し、領域内で研究が進められる様々なハイブリッド触媒系の機構解明に取り組んだ。 今年度は、前年度に引き続き、不斉トリアゾリウム塩を用いる開環付加反応の機構解明に取り組んだ。本反応は、律速段階において触媒2分子が関与することが実験的に明らかにされている。そこで、律速段階の遷移状態に着目し、AFIR法を用いることで、コンフォメーションの異なる60個の構造を求めた。得られた構造を効率よく解析すべく、新しい解析法を提案した。まず、遷移状態間のエネルギー差を目的変数に、各原子上の部分電荷から求まる静電相互作用エネルギー項、および、ファンデルワールスエネルギー項を説明変数とした上で、PLS回帰モデルを構築し、エネルギー差に大きく寄与する原子間ペアのランキングを作った。その結果、複雑な構造の中から、遷移状態の安定性に大きく寄与する原子間ペアを効率よく抽出することが可能となった。この手法は、PLS回帰モデル作成に利用するデータの範囲を変えることで、比較的安定な遷移状態のエネルギーに寄与する原子ペア、大きく不安定化した遷移状態のエネルギーに寄与するペアを分けて抽出できることが大きな利点の一つであると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数の触媒系の反応機構の研究を進めている。非常に複雑な系の解析には時間がかかっているものの、反応機構の調べを進める上で、新たな解析手法の提案に結び付いたものもあるため、全体としてはおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
ハイブリッド触媒系は、複数の触媒が関与するため、計算コストが高くなってしまう。そのため、反応経路を(数か月単位のスケースで)計算するためには、電子状態の計算を大胆に近似せざるを得ない。しかし、ハイブリッド触媒系の中には、反応中心が未知であったり、反応中心が反応の進行に伴い変化するなど、従来の手法(ONIOM法など)の適用にも困難が伴っていた。そこで、今後は反応中心が未知の場合であっても、適切に反応中心を選びながら、反応経路の探索が行えるよう、検討していく予定である。
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