研究実績の概要 |
本研究では、有機触媒と金属触媒を協働化することにより創製されるハイブリッド触媒系を活用することで、単一の触媒のみでは困難であった高選択的合成反応の開発を目標とする。“有機触媒による不活性結合活性化”と“金属触媒による選択的炭素-炭素結合形成反応”が協働して機能するシステムを合理的かつ精密に構築する。炭素-ホウ素あるいは炭素-水素結合の変換に主眼を置き、複雑な多官能性機能分子の全合成研究に展開可能な官能基許容性や直裁性に優れた高選択的分子変換プロセスを創出する。異なる研究分野で活躍する領域内の研究者との共同研究あるいは情報交換を行いながら、新たなハイブリッド触媒系の概念の創成を目指す。本年度は、以下に述べるような研究成果が得られた。
1)ハイブリッド型N-ヘテロ環カルベン(NHC)/パラジウム触媒系によるアルデヒドとアリルアルコールの脱水型アリル化反応の開発に成功した。NHC触媒前駆体であるチアゾリウム塩と Pd(TFA)2/DIPPF 錯体の共触媒および炭酸カリウム存在下、脂肪族アルデヒドとシンナミルアルコールをTHF中60 °Cで反応させたところ、脱水型アリル化が進行し、対応するβ,γ-不飽和ケトンが収率69%で得られた。
2)展開研究として、ハイブリッド型銅/パラジウム触媒系による不斉クロスカップリング反応の開発に成功した。キラル銅/NHC錯体触媒とパラジウム/ビスホスフィン錯体触媒を協働的に用いることにより、芳香族アルデヒド、ハロゲン化アリール、シリルボランの三成分不斉クロスカップリングが進行し、キラルなジアリールメチルシリルエーテルを与えた。本反応では、アルデヒドへのケイ素の不斉付加、続く1,2-Brook転位を経て“キラルα-アルコキシアルキル銅種”を触媒的に形成する。このキラル銅種がパラジウム触媒存在下でハロゲン化アリールと反応する。
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