計画研究
多くの酸素官能基や四置換炭素を有するタキソールに代表される官能基密集型天然物は、 タンパク質を介した信号伝達の新たな制御試薬や革新的な医薬品を提供するための重要なリード構造になる潜在性を持っている。しかし、自然界からの単離は困難であることが多く、創薬応用のためには全合成が必要である。我々はラジカル反応を全合成へ応用してきた。炭素ラジカルを用いた炭素-炭素結合形成反応は、穏和な中性条件下、高化学選択的に進行するため、有機合成化学の観点から極めて有用である。2021年度は、新規収束的戦略の開発と官能基密集型天然物の効率的全合成の実現により、課題を大きく進展させた。TiO2の光触媒能を利用した脱炭酸型ラジカル連結反応を見出した。本反応は、官能基密集型天然物の収束的合成に適しているだけでなく、CO2とH2のみが副成するため環境調和性が高い。さらに、本反応をタキソール全合成における鍵反応へと応用した。オイオニミノールオクタアセテートはP糖タンパク質阻害活性を有し、3環性の骨格上に9個の酸素官能基を有する。特に分岐炭素鎖の構築は困難である。我々は、ビニルラジカルを利用した分子内反応によって、分岐炭素鎖を立体選択的に構築し、オイオニミノールオクタアセテートの不斉全合成を達成した。レジニフェラトキシンは、新規鎮痛薬として期待されており、5/7/6員環に、7つの連続不斉中心を含む多数の酸素官能基を有する。我々は、すでに報告している全合成ルートを再構築し、官能基変換および合成経路を最適化した。その際、光触媒を用いた脱炭酸型ラジカル環化反応を用いることで、7員環を立体選択的に合成した。これにより、レジニフェラトキシンの全合成の工程数を41から26に削減した。さらに、類縁天然物である、クロトホルボロン、プロストラチンおよびチニアトキシンの網羅的全合成を短工程(16-20工程)で達成した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
長友優典 令和3年度東京大学卓越研究員・伊藤寛晃 2021年度天然物化学談話会奨励賞T. ShimakawaおよびA. Watanabe, PACIFICHEM 2021, Student Poster Competition Award渡辺崇央, 複素環化学討論会, 優秀発表賞・高岡恭兵, 日本薬学会関東支部大会, 優秀口頭発表賞・渡邉歩, 次世代を担う有機化学シンポジウム, 優秀発表賞
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (24件) (うち国際学会 7件、 招待講演 6件) 備考 (4件)
Organic Letters
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