計画研究
本研究では、太陽系天体における水・物質循環に関する実証可能な物理モデルを構築し、多様な水環境を有する太陽系天体が、いかにして作られたのかを明らかにする。対象とする天体によってサイズ・水量・環境が異なるため、個々の天体について物理モデルを構築する。最終的には、実験班により定量化された化学過程を、各天体の物理モデルに組み込み、探査・分析データを実証として、太陽系天体の水・物質循環の歴史を紐解くことを目的とする。微惑星に関しては、まず、短寿命放射性核種の壊変によるエネルギーを熱源とした熱史モデルを構築し、氷の融解による含水鉱物の生成過程を調べた。微惑星内の水循環モデルとしては、水文学で用いられている地下水モデル(GETFLOWS)を任意の重力場で計算できるように拡張した。火星に関しては、古火星の気候の維持メカニズムを調べることを目的として、厚い二酸化炭素大気に適用可能な放射伝達モデルの構築に取り組んだ。近年の古火星気候研究の精密化を鑑み、構築中のモデルから得られる放射フラックスを先行研究と比較した結果、概ね一致した結果が得られた。氷天体に関しては、長期内部熱進化を、高速かつ高精度に数値シミュレーションするプログラムを開発した。それを用い、土星系氷衛星における内部海保持の条件を決めた。また、氷衛星の潮汐変形の大きさから、粘弾性潮汐変形理論を用いて内部構造や組成を制約した。原始地球に関しては、地球のマグマオーシャンでの金属の分離過程を取り扱う数値モデルに任意の元素のケイ酸塩・金属間の分配と移流を組み込み、分離直後の金属とケイ酸塩メルトにおける各元素の濃度の計算を可能にした。状態方程式と地震波観測値の比較により、外核全体の組成を制約し、コアに入りうる水素の量の上限を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
ポスドクの雇用が予定より遅れてしまったため、微惑星の水循環モデルの構築に関しては若干の遅れが生じてしまったが、そのほかの天体における物理モデルは極めて順調に進んでいるため、全体として「おおむね順調に進展している」とした。
当初の計画通りに研究を推進する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 5件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 8件、 招待講演 6件)
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