計画研究
本研究では、太陽系天体における水・物質循環に関する実証可能な物理モデルを構築し、多様な水環境を有する太陽系天体が、いかにして作られたのかを明らかにすることを目的としている。最終年度までには、実験班により定量化された化学過程を、各天体の物理モデルに組み込み、探査・分析データを実証として、太陽系天体の水・物質循環の歴史を紐解くこと目指す。本年度は、前年度までに構築 した小惑星母天体(微惑星)の水循環過程を組み込んだ熱進化計算と、小惑星形成に伴う衝突による衝撃変性・脱水などの計算結果を用いて、「 はやぶさ2」のリモセンデータと相互参照することによって水を含んだ微惑星の進化理論を構築した。火星においては、前年度までに行った地下水循環モデルを用いて古火星表層環境を局所的にモデル計算と、火星探査(リモセン・ローバー)によって得られているデータと比較検討することによって古火星表層環境の復元を行った。氷衛星に関しては、水-氷-岩石間の化学反応過程を考慮した長期熱進化モデルを様々な氷天体に応用し、内部海の成立条件や進化過程について調べた。初期地球に関しては、地球誕生時の岩石と鉄の分化過程、およびマグマオーシャンの固化過程を考慮したモデルを用いて、宇宙空間に接続している大気からマントル、コアまでを統一的な視点から水・揮発性元素の分配過程を調べた。対象とする天体の大きさや組成に応じて、水が関与する化学反応過程・物質循環の空間的・時間的スケールが異なるため、それぞれの物理モデルを用いる必要がある。小惑星母天体に関しては、玄田(代表)が担当し、火星の大気大循環モデルに関しては、倉本(分担)、高橋(分担)、火星の古環境復元に関しては、黒川(分担)が、氷衛星に関しては、鎌田(分担) が、初期地球に関しては玄田(代表)と黒川(分担)が主体となって行った。
2: おおむね順調に進展している
各天体の物理モデルの構築もほぼ完了し、他班との融合研究が実際に行われ、実績が出つつあることから、「おおむね順調に進展している」といえる。
新型コロナウィルス感染拡大の状況により、外国へ渡っての共同研究等には制限が出てきているが、zoomなどを利用して頻繁に情報交換することによって、その 不利点を克服し、当初の計画通りに研究を推進する。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 6件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 12件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
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