計画研究
水惑星表層の水-岩石系に存在する酸化還元・pH勾配は、生命にエネルギーを供給する。そのため、これらの勾配を支配する水環境の物理化学条件(pH、酸化還元状態、元素濃度)を復元することは、水惑星と生命の関係を探るうえで本質的である。本計画研究は、領域全体における最先端の分析拠点の構築と水環境復元のための化学反応素過程の解明を担っている。その中核的テーマとして、(1) X線顕微鏡(STXM)を中心とする分析拠点による分子地球化学的解析の推進、(2) 水-岩石反応の解析による分子地球プロキシの開発、(3) (1),(2)の地球外試料への応用による水惑星の物質循環や進化史の解明を推進する。本年度は新設のBL-19A/STXMの実試料への適用を進めるとともに、STXM研究推進ボードを立ち上げ、領域内外を対象とした共同利用体制の整備を行った。分子地球化学プロキシの検証と適用に関しては、A02班と共同で、火星ゲールクレータに探査データを解析することで、かつて堆積物の間隙を満たしていた液体の水の水質復元に成功した。太古の火星に存在した液体の水の塩分やpHといった火星の水質が生命の生存に適したものであることを明らかにした。また分析された塩分になるためには、初期火星において100万年程度の温暖期にわたって湖に塩分が運ばれて濃縮される必要があることも確かめ、火星の湖が有機物の重合・高分子化に有利な、生命誕生にとって適した場であったことを示した。
2: おおむね順調に進展している
STXM共同利用体積を確立することができた。また、太古の火星に存在した液体の定量的な水質復元に成功した。以上の成果より、当初予定通り順調に研究が進展していると判断できる。
(1)ビームライン維持・高度化:地球惑星科学分野のさまざまな研究者によるSTXM研究を推進するため、STXM研究支援を推進する(2)X線顕微鏡を利用した地球外物質の分析:特に、水質変質過程における有機物と鉱物の相互作用を明らかにする。またX線顕微鏡を用いた地球外物質の分析手法の確立・強化を行う。(3)地球化学プロキシの開発:地球外試料の分析データから水の物理化学情報(pH、酸化還元状態、塩濃度など)を推定する手法の開発を行う。また開発した地球化学プロキシを適用することで水惑星の水質復元を行う。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (17件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
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