研究領域 | 次世代物質探索のための離散幾何学 |
研究課題/領域番号 |
17H06461
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古田 幹雄 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (50181459)
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研究分担者 |
加藤 毅 京都大学, 理学研究科, 教授 (20273427)
五味 清紀 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (00543109)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 格子指数定理 / Wilson-Dirac作用素 / K群 |
研究実績の概要 |
Atiyah-Singerの指数定理は閉多様体上の線形偏微分方程式の解空間の次元から決まる「指数」を、ある条件の下でトポロジカルに与える公式である。 本研究のひとつの課題は、ある設定の下で、指数定理を(1)非線形偏微分作用素に対して、また(2)閉ではない多様体、に対して拡張し、ある種の非線形偏微分作用素に対して解の散乱に相当する現象をトポロジカルに把握することである。ここで(1)としては3,4多様体上のゲージ理論の方程式、(2)としては 端のモデルが閉多様体の被覆空間である開多様体が対象である。 ・今年度の主要な成果は格子ゲージ理論におけるWilson-Dirac作用素の指数と連続理論におけるDirac作用素の指数を結び付けたことである。ただし、現在のところ、考える多様体は、トーラスであり、考える格子は、正方格子に限られる。議論のキーとなるのは、Wilson-Dirac作用素に対して、楕円型作用素のア・プリオリ評価に相当する格子上の評価が成立することである。物理学者Neubergerによる「作用素の局所性」を導く計算を、数学的にはそのように読み代えることができる。 ・物理学者の深谷英則・大野木哲也・山口哲の3氏および数学者の松尾信一郎・山下真由子の2氏との共同研究により、任意の多様体を格子ゲージ理論によって扱う枠組みが提案された。基本的なアイディアは、任意の多様体を高次元のトーラスに埋め込むことである。連続理論においては埋め込まれた多様体の近傍への指数は局所化する。格子理論において対応する局所化の定式化が次のステップと想定されるが、そこに生じる問題は考察途中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
●トーラス以外の任意の多様体を扱う可能性が見出され、またそこにある課題が摘出されたことは新しい進展である。 ●一方、非線形方程式について直接の著しい成果は今年度は得られなかった。 ●しかし、格子上のWilson-Dirac作用素のWilson項のもつ数学的な意味を見出したことは、将来の新しいプロジェクトの可能性を開くと考えられる。特に、非線形方程式を格子上で扱う可能性が見出されたといえる。もしこれが可能となれば、非線形方程式の有限次元近似を数学的にも運動量空間ではなく実空間で行う可能性がある。従来の多様体の切り貼りによるモジュライ空間のgluingは、技術的に複雑なところであった。もし実空間上で有限次元近似が可能となれば、gluingに新しい技術をもたらす可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
●以下のように物理と数学の既知の事柄を確認することからはじめたい。 ●物理学者と共同研究を進めることにより、格子ゲージ理論の物理側で蓄積された知見を確認する。 ●有限要素法の理論においてWilson項の扱いに相当する議論はどのようになされているのかを確認する。
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