研究領域 | 次世代物質探索のための離散幾何学 |
研究課題/領域番号 |
17H06467
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高見 誠一 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40311550)
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研究分担者 |
遠藤 明 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究部門付 (30356604)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 極小曲面 / 3Dリソグラフィー / 石けん膜 / 金属原子含有界面活性イオン液体 |
研究実績の概要 |
極小曲面とは、枠の上に貼られる曲面のうちで面積が極小のものであり、実世界では石鹸膜として存在する。直線など単純な枠を用いた場合でも複雑な形状の極小曲面を形成することが可能であり、その形状は幾何学で予測できる。一方、これは数学の概念であるため、基本的にはサイズは影響しない。そこで、マイクロメートルスケールの枠を形成することで極小曲面の形状をもつ同程度のスケールの材料を合成できると着想し、本年度は昨年度に引き続きマイクロメートルスケールの枠形成手法の探索を行った。2光子を用いたリソグラフィーシステムを用いることで、スピンコートしたレジスト中に高さ数十マイクロメートル、幅数百マイクロメートル程度のらせん構造の形成に成功した。また、この枠構造を伸縮できるよう、両端を異なる基板上に固定した構造の形成にも成功した。さらに、1桁程度大きな構造の形成を目指し、3Dプリンタによるサブミクロン程度の大きさのらせん構造や立方体の形状をした枠構造の形成を試みた。作成時のパラメータを調節することで、その形成に成功し、枠上に石けん膜を形成することに成功した。また、電子顕微鏡による観察を目的とし、真空中でも蒸発せず、界面活性能を持つ液体として、金属原子含有界面活性イオン液体の合成に取り組んだ。コバルトや亜鉛を対イオンとする金属界面活性剤を合成し、その界面活性を調べた結果、合成した金属界面活性剤は長鎖アルキル基を有する金属塩でありながら室温で液体の性状を示すイオン液体であることが明らかとなった。また、表面張力測定により、これらが実際に界面活性剤として機能することが明らかとなった。水にも可溶であるため、減圧条件下で極小界面を形成させる液体膜としての利用が可能であることが期待できる。今後、さらに自由な構造の実現に挑戦するとともに、石けん膜に加えてセラミックナノ粒子を含む膜など、機能を持つ膜の形成に挑戦する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数学で予想される幾何学構造に着想した材料を作成するための方法論を開発するという目的に沿った研究が進捗している。数十ミクロン、数百ミクロンなどスケールの違う形成手法の利用を試みることで、自在な枠構造の形成ができるサイズ領域が明らかとなってきた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本研究で実現した自由に設計できるマイクロメートルスケールの膜という特徴を活用できる機能の開拓を行う。例えば、石けん膜にセラミックスナノ粒子を含有させ、セラミックスの持つ機能を自由な膜形状に付与する手法の開発を行う。
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