研究領域 | 次世代物質探索のための離散幾何学 |
研究課題/領域番号 |
17H06468
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
大西 立顕 立教大学, 人工知能科学研究科, 教授 (10376387)
|
研究分担者 |
久野 遼平 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 講師 (60725018)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
|
キーワード | 高分子構造・物性 / 生物活性 / 化合物空間 / ケモインフォマティクス / 重み付きネットワーク / コミュニティ抽出 / 相分離構造 |
研究実績の概要 |
生物活性低分子によって構成される化合物空間の構造を調べた.化合物空間とは,存在し得る化合物全体の集合であり,構造の類似度により化合物間に距離が定義される.データ駆動型創薬では,特に生物活性低分子空間内において候補化合物が探索されている.探索効率を向上させるには,生物活性低分子空間の構造や,空間上の生物活性値分布を明らかにする必要がある.先行研究では,化合物を頂点としたネットワークにより生物活性低分子空間を表現し,複雑ネットワーク指標を用いて空間構造を調べる試みがなされている.類似度がある閾値以上の化合物同士をリンクでつないだ閾値ネットワークが提案されているが,ネットワーク構造が閾値の設定に強く依存する問題があり,生物活性低分子空間の本来の構造を捉えられない可能性がある.そこで,リンクの重みを化合物間の類似度そのものとした重み付きネットワークを考え,その構造を解析した.受容体等のターゲットごとに,そのターゲットに対して生物活性をもつ低分子により構成される重み付きネットワークを構成し,ネットワークのコミュニティ構造を調べた.コミュニティは,互いに化学的構造が似通った低分子の集合と見なすことができる.いくつかのコミュニティでは,そのコミュニティに属する低分子の生物活性値分布が,ネットワーク全体の生物活性値分布と著しく異なっており,特有の生物活性値を共有した構造の似通った低分子集合を見出すことに成功した.また,著しく高い(低い)生物活性値をもつ低分子同士が,重み付きネットワークの中では特に強くつながり合っており,特に似た化学的構造を共有していることがわかった. また,粗視化分子動力学を用いて行ったブロックコポリマーのシミュレーションのデータを用いて,様々な相分離の複雑なネットワーク構造を定量化する手法の開発も行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ケモインフォマティクス分野において膨大なデータベースを活用して分子・化合物の複雑な構造を解析する研究を進めている研究者に協力いただき,膨大なデータを用いた分子・化合物のネットワーク構造の研究を進展させることができた. 昨年度に実施したエラストマーのネットワークポリマーについての研究を発展させ,粗視化分子動力学シミュレーションで生成される様々な相分離構造を分析する共同研究にも着手し,解析が進んでいる.
|
今後の研究の推進方策 |
高分子ブロック共重合体のミクロ相分離構造の準安定構造の形状をマルチフラクタルを用いて解析することで,構造の定量化手法を探る. エラストマーの架橋高分子の力学物性について,複雑ネットワーク指標である近接中心性を拡張した指標を開発することで各架橋点の力学物性に対する寄与を解析する.
|