研究領域 | 植物の生命力を支える多能性幹細胞の基盤原理 |
研究課題/領域番号 |
17H06471
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
五島 剛太 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (20447840)
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研究分担者 |
佐藤 豊 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 教授 (40345872)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 植物分子遺伝学 / 細胞生物学 |
研究実績の概要 |
幹細胞の新生と維持にはしばしば「非対称分裂」(=2つの娘細胞が異なる性質を呈するような細胞分裂様式)を伴う。本計画研究班は、植物細胞が行う非対称分裂の一連の過程、すなわち「細胞極性の確立・分裂・分化と維持」機構の解明を通じて、植物生存の永続性を支える基盤となる植物幹細胞の新生と維持の分子基盤に迫るとともに、植物幹細胞生物学分野の創生に貢献することを目指している。 最近確立したヒメツリガネゴケの新しい遺伝子編集技術(Yi and Goshima. 2020a)とライブイメージングを駆使して、幹細胞新生のための細胞の分枝と分裂の仕組みを明らかにした(Yi and Goshima. 2020b)。これは、植物が分枝によって効率よく自らの占める空間を広げていく仕組みについての新知見の提供となった。また、佐藤(分担)の同定した球状型イネ胚形成突然変異体の原因遺伝子のコケオルソログについて、3種類の変異体が得られ、著しい植物体成長異常が認められた。中でも、原糸体の分枝過程において、分枝や非対称分裂は起こるものの、娘細胞の成長が著しく遅延しているように見受けられ、幹細胞化過程に欠損があるという仮説が生まれた。 イネのシュート部分を欠失する変異体の初期胚を用いて、野生型と遺伝子発現プロファイルを比較し幹細胞形成に関わる候補遺伝子として24種類の転写制御因子を明らかにした。計画代表の五島とともに解析しているイネ球状胚型変異について、イネ初期胚における遺伝子発現プロファイルの比較を野生型と変異型胚で行ったところ、胚発生の進行が発生過程で大きく遅れることが明らかになった。このことから、この球状型胚突然変異原因遺伝子が発生の進行速度を制御する新たな因子である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原著論文の発表や執筆に至ったことに加え、共同研究として進めているシグナル伝達関連因子について、ヒメツリガネゴケとイネでパラレルに表現型解析を進め、発生の進行速度を制御する共通機能があるという仮説を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ヒメツリガネゴケ 微小管結合因子、キネシンモーター、シグナル伝達分子、極性化に重要な役割を果たすことが濃厚な因子の破壊株を網羅的に作出する逆遺伝学を継続するとともに、見つかった興味深い遺伝子について、細胞内動態解析を行う。特に、佐藤と共同で進めているシグナル伝達関連因子の欠損表現型の定量的かつ長期的な観察実験は、観察法の改良も含めて精力的に進める。 (2)イネ イネ胚形成過程で新規に構築される幹細胞の形成機構を明らかにすることを目指して以下の研究を行う。胚形成過程でシュートを欠失する突然変異系統由来の胚と野生型胚の遺伝子発現プロファイル解析により同定した必要な24の転写因子候補のうち幹細胞形成に必須に機能する遺伝子セットを明らかにするために、これら24遺伝子をランダムな複数セットに振り分けてカルスに同時発現させ、カルスからの再分化における幹細胞形成を向上させる遺伝子セットを同定する。
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