計画研究
茎頂幹細胞の増殖制御機構の解明サイトカイニン生合成(IPT3, CYP735A2)と輸送(PUP14)、受容(AHK)遺伝子のプロモーター:構造遺伝子ー蛍光タンパク質のコンストラクトを導入したシロイヌナズナのラインの作出を行ない、茎頂領域においてこれらの蛍光が観察可能であることを確認した。これと並行して、IPT多重変異体、LOG多重変異体、ABCG14変異体における茎頂幹細胞を含む分裂組織(SAM)のサイズと分裂活性を解析した結果、ABCG14により輸送されるサイトカイニン前駆体はSAM全体の細胞の分裂活性に関与すること、LOGにより活性型となるサイトカイニンは特にSAM表層部や葉原基を形成する細胞の分裂活性にも大きく寄与することを示唆する結果を得た。ABCG14の生化学的機能解析においては、ABCG14過剰発現シロイヌナズナ培養細胞の系を用いて、ABCG14発現誘導後に培地中のサイトカイニン濃度が顕著に上昇することを明らかにした。各種阻害剤処理の影響から、塩基型以外のサイトカイニンを排出する活性を持つことを明らかにした。節幹細胞の活性化と増殖維持機構の解明イネの茎伸長は節間に存在する介在分裂組織の活性化(細胞分裂)によって引き起こされるが、これまでイネの節介在分裂組織の存在場所は不明であった。そこで、細胞分裂マーカー(EDU)を用いて、節間伸長時の細胞分裂を観察し、節伸長時特異的に急激な細胞分裂を行う領域を見いだすことに成功した。また、イネの節間伸長時には節間内に随空が形成されるが、介在分裂の活性化のタイミングで介在分裂組織周辺では細胞死が起こっていることを明らかにし、イネの節間構造形成の仕組みの一端を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
茎頂幹細胞の分裂維持機構へのサイトカイニンの役割を解析するための基本的なツール(プロモーター:構造遺伝子ー蛍光タンパク質発現シロイヌナズナ)を作出した。本格的な観察はこれからであるが、これと並行して行なったサイトカイニン輸送系・合成系遺伝子変異体の解析から、輸送系と合成系の機能欠損が茎頂分裂組織内で与える影響に違いを見出せたことから、これらの空間的配置の重要性を支持する結果を得ることができた。また、ABCG14の機能同定についても、最終的な輸送基質同定に近い段階にまで進むことができた。節幹細胞の活性化と増殖維持機構の解明についても計画通りに進んでいる。
次年度は、今年度作出したシロイヌナズナを用いて、茎頂領域においてこれらの遺伝子が機能する組織と細胞を特定し、茎頂幹細胞周辺におけるサイトカイニン生合成・輸送・受容細胞の空間的配置を明らかにする。また、サイトカイニンの輸送体遺伝子 ABCG14の輸送基質として候補となったサイトカイニンヌクレオシドおよびヌクレオチドについて、さらに解析を進め最終的な同定を行う。さらにサイトカイニン活性化酵素LOGと受容体AHKの茎頂幹細胞付近での発現部位を改変した植物を作出し、その表現型を調査し、幹細胞の分裂活性維持におけるサイトカイニン空間的動態の重要性を明らかにする。節幹細胞の活性化と増殖維持機構の解明についても引き続き、浮きイネなどイネの多様性を利用して、介在分裂組織の活性化のしくみの解明に取り組む。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 6件、 招待講演 7件) 図書 (1件) 備考 (2件)
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