研究領域 | 植物の生命力を支える多能性幹細胞の基盤原理 |
研究課題/領域番号 |
17H06473
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
榊原 均 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (20242852)
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研究分担者 |
芦苅 基行 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 教授 (80324383)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 幹細胞 / 植物ホルモン / サイトカイニン / ジベレリン |
研究実績の概要 |
サイトカイニン生合成遺伝子のCYP735A2と、輸送体遺伝子ABCG14について、それぞれのプロモーターに構造遺伝子-GFP遺伝子を連結させたキメラコンストラクトを導入したシロイヌナズナを作出し、茎頂領域における各遺伝子の発現組織と細胞を特定した。また、サイトカイニンの輸送体ABCG14については、種々の阻害剤を利用することにより、サイトカイニンのヌクレオチド型前駆体の排出輸送体であると結論づけた。さらに茎頂領域におけるサイトカイニン空間的動態の重要性を明らかにするために、最表層のL1層細胞で特異的に発現するATML1プロモーターでサイトカイニン情報を薬剤誘導的に亢進もしくは阻害するシロイヌナズナを作出し、その表現型を調べたが、肉眼で確認できる変化は観察されなかった。このことはL1層でのサイトカイニン情報伝達は、茎頂幹細胞の機能維持に本質的な影響を与えないことを示唆している。 遺伝解析により、浮きイネの水没に応答した草丈伸長に関わる遺伝子としてSD1遺伝子を同定した。イネは水没すると、エチレンを体内に蓄積し、OsEIL1aタンパク質を介してSD1タンパク質を多量に生産させることを明らかにした。SD1は、ジベレリン合成酵素であり、浮きイネのSD1酵素活性は、一般的なイネのものよりも圧倒的に高いことも判明した。さらに、一般的なイネが成長するときには主にGA1タイプのジベレリンを生産するが、浮きイネのSD1タンパク質は、GA1よりもGA4タイプのジベレリンを約20倍も多く生産する能力を持つことを明らかにした。GA4はGA1に比べて介在分裂組織により強く影響し草丈の伸長を誘導した。以上のメカニズムにより、浮きイネは水没するとGA4を効率良く生産し、草丈の急激な伸長を引き起こしていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
茎頂におけるサイトカイニン生合成系、輸送系の基本的な配置が明らかになり、また、輸送体の1つであるABCG14の基質を特定できた。さらに、茎頂領域におけるサイトカイニン空間的動態の重要性を明らかにするための各種遺伝子改変シロイヌナズナも作出されつつあり、大きな問題なく研究は進捗している。節幹細胞の研究においても、鍵となるジベレリンの作用機構を明らかにできており、当初の目標を達成している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、茎頂幹細胞付近での発現部位を改変したシロイヌナズナについて、さらにその表現型を調査し、幹細胞の分裂活性維持におけるサイトカイニン空間的動態の重要性を明らかにする。また、茎頂領域においてABCG14以外にサイトカイニン輸送に関わる遺伝子の存在が予想されるため、その探索にも着手する。 節幹細胞の活性化と増殖維持機構の解明についても引き続き、浮きイネなどイネの多様性を利用して、介在分裂組織の活性化のしくみの解明に取り組む。
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