研究実績の概要 |
茎頂分裂組織(SAM)内の局所領域特異的にサイトカイニン濃度を減少させた時の茎頂幹細胞活性への影響を調べるために、アポプラスト、小胞体内腔、サイトソル局在型のサイトカイニン分解酵素(CKX)アイソフォーム(それぞれCKX4, CKX1, CKX7)をWUSプロモーターおよびCLV3プロモーター下流に連結させた融合遺伝子を導入したシロイヌナズナのT2世代を確立した。これらの発芽5日目の植物体を固定化および透明化し、顕微鏡観察によりSAMのサイズを比較した。その結果、野生型(Col)に比べ、CLV3pro:CKX4でSAMサイズが有意に減少していた。一方、WUSpro:CKX4では減少傾向は見られたものの有意差はなかった。このことはSAMの中央帯領域におけるアポプラスト空間のサイトカイニン濃度の維持が、茎頂幹細胞の維持に重要であることを示唆している。WUSの発現する形成中心における効果が小さかったことについては明確な説明はできないが、形成中心領域で発現するサイトカイニン受容体のうち、より中央帯寄りのものによる受容が茎頂幹細胞の維持に関与している可能性が考えられた。 茎頂分裂組織内でのサイトカイニン輸送に関わる新規輸送体候補遺伝子CTC5, CTC13について、タバコ葉での一過的発現系を用いた検証では有意な輸送活性を再現できなかったことから、発現タンパク質にタグをつけないライブラリーを再度構築し、多爆の一過的発現系を用いて再スクリーニングを行った。その結果、新たにサイトカイニンの排出輸送体の候補遺伝子が2つ得られた。
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