研究概要 |
国語施策と国語教育に役立てるこのできる語彙表と漢字表を,代表性を有するコーパスに基づいて作成し,それらを活用する方法を開発することが目的である。(1)共通データとしての教科書コーパスと語彙表・漢字表を作成し,(2)難解用語の抽出と言い換え,(3)現代社会に対応した漢字表の在り方とは,(4)コーパスを用いた語彙指導,(5)コーパスを用いた漢字指導,(6)コーパスを用いた作文指導という五つの応用課題に取り組み,それぞれ次のような成果が得られた。 (1) 教科書コーパスと語彙表・漢字表の作成 教科書コーパスの作成は順調に進み,その一部を試験公開した。現代日本語書き言葉コーパスの一部を用いて語彙表を作成し,語彙レベルの研究の基盤とした。教科書コーパスの語彙表・漢字表を作成し,教科特徴語彙や教科特徴漢字を抽出した。 (2) 難解用語の抽出と言い換え 語彙のレベル情報を難解語の特定と言い換えに応用する方法を研究した。 (3) 現代社会に対応した漢字表の在り方とは 文化審議会から2009年3月に試案が示された「新常用漢字表」に新たに採られた漢字について,現代日本語書き言葉均衡コーパスの実態と対照して,問題点を探索した。 (4) コーパスを用いた語彙指導 現代日本語書き言葉均衡コーパスに基づく語彙表から導き出した,語彙レベルと教科特徴語彙について,その性質を考察し,語彙指導に役立てる方法を探索した。また,別のプロジェクトで作成された中高生の作文語彙と,語彙レベル・教科特徴語とを対比して分析した。 (5) コーパスを用いた漢字指導 小学校教科書を用いて,教科に特徴的な漢字を抽出し,教科特徴漢字に配慮した漢字指導の在り方を提言する論文にまとめた。 (6) コーパスを用いた作文指導 高校生に対する課題作文の指導にあたり,課題語彙と共起する語句を与えたり,当該語彙を用いた文例集を与えたりする方法について研究し,実践した。
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