計画研究
地球環境変化に対する海洋のフィードバック効果を定量化することが急務である。そこで本研究では、強力な赤外放射活性を示したり有機エアロゾル核を形成したりするような大気化学的に重要で、かつ海洋がその収支に重要な役割を果たしていると考えられる微量気体成分について、その海洋表層における生成(分解)過程の詳細や環境条件変化に対する生成(分解)量の応答を明らかにすることを目的としている。また最新の地球化学的分析手法を駆使して大気・海洋の各種パラメータを定量し、他班に貢献することも併せて目的としている。本年度は、昨年度の観測航海(白鳳丸KH08-2次航海)で得られた試料の分析や、観測結果の解析などを中心に行った。具体的には、採取した海水試料(もしくは海水からの抽出試料)の分析を進め、西部北太平洋域亜寒帯・亜熱帯両海域における微量気体成分の濃度・同位体組成の水平・鉛直分布を定量化した。また同航海で船上培養実験を行った海水試料や沈降粒子試料等についても分析を進め、各微量気体成分の生成(分解)量の絶対値や環境変化に呼応した生成(分解)量の変化、窒素固定速度等の関連パラメータ等を求め、これを元に各海域におけるプロセス別の生成(分解)量や大気への放出フラックス等を求めた。解析では特に微量気体成分連続モニタリングシステムを用いた表面水の観測で顕著な変動を示したDMS(ジメチルサルファイド)に注目し集中的な解析を行った。その結果、クロロフィル量とは相関しない高濃度域が発生することを発見した。また^<15>Nトレーサーの添加環境下の培養で求めた窒素固定活動(大気中の窒素ガスを固定態窒素に変換する過程)に関して、^<15>Nトレーサーのかなりの部分(平均50%・最大80%)が溶存態の有機窒素(DON)に移行していることが明らかになった。これは海洋全体の窒素固定速度が、従来の粒子態の有機窒素(PON)のみに基づく定量値から倍増する可能性があることを意味しており、大きな発見となる可能性がある。成果は国内外の学会で発表するとともに、国際誌に投稿した。昨年度のものを中心とした投稿した成果の一部は、受理・印刷された。
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