計画研究
黄砂が多く飛来する春季に沖縄辺戸岬、釧路、大槌、東京で大気降下物質を採取した。Total deposition fluxの平均値は、銅を除くすべての元素について辺戸岬で最も高かった。全濃度でみるとアルミニウムが最も高く、次いで鉄、チタンの順となった。全濃度に占める粒子態の割合は、アルミニウムと鉄に比べてチタンで低くなる傾向が認められ、アルミニウムと鉄については、試料のpHが高いほど粒子態の割合が高くなる傾向がみられた。亜鉛、カドミウム、鉛は、地殻中の濃度に対する濃縮率が高く、人為起源物質の影響を強く受けていることが示唆された。西部北太平洋亜寒帯域における大型粒子、コロイド粒子、溶存態の各種微量元素濃度の広域水平分布を明らかにするために、曳航式クリーン採水システムを用いた表面水の高密度サンプリングを実施した。また、海水中の微量金属元素の存在状態に関する基礎検討を行った。まず、海水中の鉄(II)を測定するため、ルミノール化学発光法を適用し、最適条件を検討した結果、50pMの検出限界を得た。この方法を琵琶湖において適用し、鉄(II)の鉛直分布を明らかにした。次に、海水中の亜鉛がどの程度有機錯体として存在するかを解明するため、配位子交換平衡-吸着カソーディックストリッピングボルタンメトリー法を用いて、亜鉛の錯化容量の測定法を検討した。春季に釧路等で採取した大気降下物質、洋上で採取した雨水およびエアロゾルを用いて、西部北太平洋亜寒帯の表層海水への添加培養実験を実施した結果、いずれも大型植物プランクトンの増殖を顕著に促進することが示され、植物プランクトン増殖量と溶存態鉄濃度の問に対応がみられた。また、人為起源物質由来の鉄は植物プランクトンによる利用能が高い可能性が考えられた。
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