研究概要 |
平成20年度では主に、沖縄本島辺戸岬において、総NO_yや硝酸・硝酸塩といったNO_x由来の物質やアンモニウム塩等を中心とする人為活動由来の連続観測を行ない、そのデータについて解析を行なってきた。また、平成20年春に沖縄辺戸岬で当該領域の関係者他と共同でW-PASSの集中観測を行った。沖縄辺戸岬ステーションにおいて上記の化学種のほかに、オムニセンス社製アンモニア測定器を用いて微量のアンモニアを観測した。期間中の平均濃度は0.66±0.32ppbvであった。同時に測定したエアロゾル質量分析計のアンモニウム濃度を用いて、中国起源の気塊に含まれるアンモニアの分配を計算した。中国由来の気塊ではアンモニウムはほぼ9割以上を占めており、辺戸に到達するアンモニア、アンモニウムはほとんど粒子態で輸送されてきたことがわかった。また、NO_yなどとの比較からガス状アンモニアは主にローカルな発生源に起因すると推定された。 また、これらの観測結果とA04-1班(現 : AO1-3班)の鵜野グループによるCMAQ化学物質輸送モデルの計算結果と比較を行なった。NO_y濃度については観測とモデルとでおおむね良く一致したが、ガス状硝酸・粒子状硝酸塩はモデルがそれぞれ過大・過小評価する結果となった。これは、CMAQモデルでは海塩粒子や黄砂とガス状硝酸との反応が組み込まれていないことにより、モデルにおける硝酸のガスー粒子分配比がガスのほうに偏っているためと考えられる。一方、NH_4^+(p), SO_4^<2->(p)はモデルと観測が良く一致したという結果になった。観測結果から、NH_4^+(p)はほとんど(NH_4)_2SO_4の形態で存在していると考えられ、中国大陸からのNH_4^+(p), NH_3(g)、SO_y(=SO_2+SO_4^<2->)の排出および輸送過程については、CMAQで非常に良く再現されていると考えられる。
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