研究概要 |
1)北極〜熱帯海域〜南極において採取した大気中ヨウ化メチル(CH_3I)濃度の変動を解析した。CH_3I濃度は大きな変動を示し(<0.02ppt〜5ppt)、極域で低く、熱帯特に太平洋東部の沿岸域で高濃度となる傾向を示した。中緯度域におけるCH_3I濃度の変動は表面海水温とよい相関を示すが、極域では日射量と負の相関を示すことがわかった。 2)気体透過膜チューブ(厚さ0.25mm,シリコン材質)を利用して水溶液中のハロカーボン類を自動で気相に抽出する実験を行った。気体の溶解度が小さいほど液-気相間で平衡に要する時間が長くなることを確認し、チューブ内を空気が通過する時間が100秒以上であれば、CH_3I,CH_2I_2,CH_2Br_2,CHBr_3,CHCl_3は平衡に達することがわかった。 3)海洋に広く分布する珪藻の一種であるPhaeodactylum tricornutumを対象として、栄養塩や温度条件がハロカーボン等の揮発性有機化合物(VOCs)生成にどのように影響するのか検討を行った。その結果、培養温度が塩化メチルやイソプレンの生成量に影響する(10℃と比較して15℃では、塩化メチルの濃度は約2倍になった)ことがわかった。また、海水試料中のハロカーボンをGC/MSへ自動導入するパージ&トラップシステムを検討し、船上での測定を踏まえた測定法の確立を行った。 4)Pavlova pinguis(海洋性単藻類)によるモノハロメタンの生成分子メカニズムとこうした遺伝子が他の藻類に存在するかどうかを確認するために、P.pinguisから目的のハライドイオン:S-アデノシルメチオニン(SAM)メチル転移酵素(HTM)遺伝子のクローニングを試みた。P.pinguisをGuillard(F/2)で人工培養した藻体からcDNAライブラリーを作成するために、トータルRNAを取得した。同様に、CH_3Iの生産が認められているカイワレ大根(Raphanus sativus)の発芽体からもトータルRNAを取得した。また、微量モノハロメタンを定量するためのヘッドスペースオートサンプラーを導入し、GC-MSによる最適分析条件の検討に着手した。
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