計画研究
(1) 西部北太平洋混合域と南北インド洋で海洋観測を実施した。春季ブルーム時の西部北太平洋では、大気と海水中に高濃度のプロモホルムが存在し、海水中分圧より大気中分圧の方が高くなる傾向が見られた。このことは沿岸域の大型藻類に由来するプロモホルムが大気を経由して外洋に供給されている可能性を示す。夏期の南インド洋では大気より海水中のジクロロメタン分圧のほうが高く、亜表層にジクロロメタンと共にクロロフィルの濃度極大が見られた。この海域では植物プランクトン起源のジクロロメタンが海洋表面から大気中に放出されていると考えられる。(2) 波照間島で4種類のヨウ素化合物の高頻度観測を継続し、それらの発生源・発生地域の解析を進めた。ヨウ化メチルとヨウ化エチルについては、中国起源の汚染ピークと同期した濃度増加が見られた。波照間周辺海域においてこれらのヨウ素化合物の海水中濃度を測定し、フラックスを求めた。(3) パージ&トラップGC/MSを用いて、汽水湖におけるハロカーボン類の定点観測を行ったところ、ハロカーボン類のフラックスは外洋の数倍から数十倍と見積もられた。プロモホルム、ジヨードメタン、クロロヨードメタンの濃度は初夏の底層付近で最も高くなり、底質での生成が示唆された。さらに、湖水からハロカーボンを生成する微生物を単離した。また、植物プランクトン由来の溶存有機物を含む海水に紫外線Bを照射したところ、ジヨードメタン、クロロヨードメタンの分解とアルケン類の生成がみられた。(4) 海産性珪藻の一種であるPhaeodactylum tricornutumに強いヨウ化メチル生成能を確認し、その生成機構を詳細に検討した。その結果、海水中のKIの添加濃度に比例してヨウ化メチル生成量が増加すること、また海水中では生成したヨウ化メチルの約10%が塩化メチルに化学的に変換されること確認した。また当該遺伝子のクローニング、大腸菌での発現に成功し、S-アデノシルメチオニンハライドイオン転移酵素であることを証明した。さらに同酵素の詳細な解析を行い、I-に特異性が高いこと、高等植物由来酵素と類似した性質を有することを明らかにした。
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