研究概要 |
静的には均一な2成分高分子ブレンド系中においても,成分鎖の運動性が有限であることを反映して大きなスケールでの成分濃度のゆらぎが存在する.この動的な不均一性が,鎖の広がり程度の大きなスケールの運動に対する効果の検討は不十分のまま残されてきた.この効果を検討するために,A型双極子を持ち末端間ベクトルの運動が誘電活性であるシスーポリイソプレン(PI)とポリ(4-tert-ブチルスチレン)(PtBS)のブレンド系に対して,誘電緩和測定と力学緩和測定を行った.その結果,高分子量PtBSと中分子量PIのブレンド系中ではPIが速い成分となり、その終端緩和には温度-時間換算則が成立しないこと,遅い成分であるPtBSについてはこの換算則が成立することが明らかとなった.一方,低分子量PtBSと中分子量PIのブレンド系中ではPIが遅い成分となり,その終端緩和には温度-時間換算則が成立することが見出された.これらの結果は,速い成分の緩和の時間スケールでは,遅い成分の濃度ゆらぎが凍結されて速い成分の緩和に対する摩擦環境が不均一となり,この不均一性が温度とともに変化するだめ,速い成分に対しては温度-時間換算則が成立しないことを示す.一方,遅い成分の緩和の時間スケールでは,速い成分が濃度ゆらぎを均一化するので,摩擦環境が均一となり換算則が成立したものと理解される.これらの結果は,ブレンド系の動的挙動に対する不均質性の効果が時間スケールと共に変化することを如実に示す結果である.さらに,ブロック共重合体系,ゲル系などについても,不均質性が動的挙動に与える効果(濃度揺らぎが共重合体の相構造の流動破壊に与える効果や分子量の不均質性がゲルの力学強度に与える効果など)を明らかにした.
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