研究領域 | 非平衡ソフトマター物理学の創成に関する総括研究 |
研究課題/領域番号 |
18068009
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡辺 宏 京都大学, 化学研究所, 教授 (90167164)
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研究分担者 |
井上 正志 大阪大学, 理学研究科, 教授 (80201937)
西田 幸次 京都大学, 化学研究所, 准教授 (80189290)
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キーワード | ポリイソプレン / ポリ(p-t-ブチルスチレン) / 相溶性ブレンド / 絡み合い緩和 / A型双極子 / 絡み合い長の混合則 / 絡み合い平坦部のマスク / 遅延Rouse平衡化 |
研究概要 |
高分子量で十分に絡み合ったポリイソプレン(PI)/ポリ(p-t-ブチルスチレン)(PtBS)相溶性ブレンド系について、その絡み合い緩和の特徴を調べた。PIは主鎖骨格に平行なA型双極子を持つが、PtBSはこの双極子を持たないので、ブレンド系の長時間誘電緩和はPI鎖の大規模運動(末端間ベクトルの揺らぎ)に帰属される。検討した全温度域において、ブレンド系全体の終端粘弾性緩和は誘電緩和より遅く、PtBSが系中の遅い成分、PIが速い成分であり、セグメント摩擦係数ζはPtBSの方が大きいことが結論された。誘電緩和と同じ周波数域において観察される速い粘弾性緩和は、PIの終端緩和とそれが誘起するPtBSの部分緩和に帰属された。高温では、このPIの終端緩和は絡み合い平坦部を伴った通常の緩和となっていたが、この平坦部剛性率の解析から、絡み合い長の混合則がKuhnセグメントの数分率を重みとした線形混合則となることが確認された。また、低温では、PIの終端絡み合い緩和は絡み合い平坦部を伴わない遅延Rouse型となることが見出された。詳細な解析の結果、絡み合い長にわたるPtBSのRouse平衡化が低温では極度に遅くなるため、PIのRouse平衡化も大きく遅延されてPIの絡み合い緩和がRouse平衡化の直後に起こるようになり、そのため、絡み合い平坦部がマスクされて明瞭に観察されなかったことが結論された。この平坦部のマスクの機構は、局所的なRouse平衡化過程についての新規な側面を明らかにしたものである。
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