研究概要 |
感熱性高分子であるポリイソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)を主鎖とし,両末端に短いアルキル鎖を有するテレケリック会合高分子に関して,希薄水溶液中における花型ミセルやメソグロビュールの形成機構,準希薄水溶液中における水和とゲル化の競合,連鎖性脱水和の理論解析を行い,疎水性ミセルによる架橋系のゾル・ゲル変換の統合的理論モデル化を行った.DSC測定,曇点測定,光散乱,中性子散乱のデータと比較検討することによりモデルの妥当性を証明した.「メソグロビュール」や「協同水和」などの新しい概念を導入することにより,水溶性高分子研究の新展開を試みた.現在,海外共同研究者(F.M.Winnikグループ)と協力して新規会合高分子(環状PNIPAM,ポリオキサドリン主鎖のテレケリック会合高分子など)を合成し,溶液物性の理論ならびに実験的検証を行っている.環状PNIPAMについては光散乱実験が完了した.得られた第2ビリアル係数からトポロジカルな相互作用の強度が評価されるが,田中は1980年代に既にポリスチレン溶液について同様な相互作用の理論解析を行っていたので,その理論結果を参照する.ゲルのレオロジー的な性質に関しては,架橋点が生成消滅するようなネットワークの流動と応力の関係を与える「組換え網目理論」を非アフィン性を考慮した一般的なモデルに拡張した.テレケリック会合高分子と界面活性剤(紐状ミセル)とのレオロジー的相互作用を調べ,組替えゲルの粘弾性の緩和時間シフトの解析を行った.
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