研究概要 |
統計力学的理論解析及びレオロジー理論解析に基づいて,高分子溶液(融液)のゾル・ゲル転換の基本特性を解明することにより,転移特性を制御する方法を開発する.また,モデル物質を用いてそれらの制御法を実験的に確認する. (1) ゲル化点(特に温度)の制御 : ゲル化温度Tgや濃度cgが会合基や官能基の数,配置,結合強度にどのように依存するかについて統計熱力学を基礎にした理論解析を行い,その予測を実験的に検証する方法を考案する.これにより,ゾル・ゲル転移温度の人工移動,高温ゲルと低温ゲルの間の反転,再帰ゾル・ゲル・ゾル転移などが分子設計で可能になる. (2) 転換幅(鋭さ)の制御 : ゲル化点で弾性率がどのような鋭さで立ち上がるかを,複素弾性率(弾性的に有効な鎖の数)の理論計算で予測する.例えば,水素結合基の数と鎖上の配置を工夫し,水素結合架橋ゴムの転移温度幅が狭く鋭い転移にできれば,製造工程(ゾル状態)では加工し易く,使用時(ゲル状態)には強固なゴムが開発できる. (3) 転換速度の制御 : 任意の初期条件からゲル化点に到達するまでの時間,ゲルの融解に要する時間を分子動力学的な視点から研究を行い,架橋反応のダイナミックスや反応速度を温度や外力印加でコントロールする分子機構を解明する.ゲル化に要する時間が短縮できれば転換に要する時間が節約できる.逆に,ゲルの融解に要する時間を遅延させることができれば薬物の徐放に応用できる. (4) ゾル・ゲル転移点での流動制御 : 非線型定常粘度のシックニング-シニング特性,剪断開始流の歪み硬化,応力ピークなどの分子論的メカニズムを解明することにより,非線型流動特性を制御する.
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