研究概要 |
小貫は、液晶中の電荷の効果の効果について一般論を構築して、応用として荷電粒子の周囲の液晶分子の秩序の乱れを計算した。さらに2成分粒子系の結晶・多結晶・ガラス状態の移り変わりを、組成と粒子サイズ比を動かして調べた。動的な不均一性や多結晶の動力学などいついてけんきゅうした。八尾は、高分子液体であるセレンに荷電不純物としてタリウムを添加した系について、石英基板との濡れ特性を実験的に調べた結果、この液体混合系が2液相分離する領域で臨界点脱濡れ現象(critical-point dewetting)が起こることを発見した。また、この系に温度勾配を与えると濡れから非濡れの状態に変化することや、非濡れの状態でも系全体の温度を急に下げると一時的濡れ(transient wetting)が出現することなど興味深い観測も合わせて行なっている。さらに、リフシッツ(DLP)理論に沿って濡れ易さについて検討を加えるため、液体混合系の誘電関数を偏光解析法によって求めている。瀬戸は、一様でLCST型の相分離を伴う水と3メチルピリジンの混合系に着目し、中性子小角散乱を用いて臨界点近傍におけるナノメートルスケールの構造を調べた。その結果、添加により臨界点が低下することが知られているLiClやNaCl, MgSO4等の塩を加えた3元系では、1相領域においても数千Åを特徴的長さとする構造が形成されている事を示唆する結果を得た。これは溶媒和効果と臨界揺らぎのカップリングにより周期的構造ができるとする理論的予測に一致する。山本は、電気泳動など荷電コロイド分散系の電気流体力学現象を扱うことのできる新しいシミュレーション法を開発し,世界で初めて濃厚なコロイド分散系の電気泳動の直接シミュレーションを実現した.その結果,これまで信頼性の評価が困難であった近似理論ではコロイド粒子の密度が大きい領域でセルモデルの精度が著しく悪くなることを示した.
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