研究概要 |
本年度は,結晶性高分子,有機分子,タンパク質分子を対象物質として,微結晶集合体の固液界面不安定性などの高次構造非平衡パターンについての研究を進める目的で以下の通り実施した。 (1)結晶性プラスチック材料の普遍的な高次構造である球晶の高次構造形成機構を明らかにすることを目標として,球晶に現れるリング縞の形成機構にアプローチした。特に成長の場である溶融体などの粘弾性液体の役割に着目し,縞模様を与える捻れピッチの決定機構について,成長界面不安定性と結晶に内在する歪みのカップリングによるモデルを提案し,実験的に検証した。その際,プラズマエッチング装置を作成し,試料作成時に最重要となる化学・プラズマエッチングの妥当性について検討を行った。また,ブレンドすることでリング縞が大きく変化することが知られている脂肪族ポリエステルの分子量依存性について検討し,Fingering不安定性が重要な因子であることを分子量依存性も含めて明らかにした。微結晶集合体の成長界面安定性についてさらに検討を行うために,温度勾配下におかれた定速変位系装置を作成した。 (2)脂質膜の形成する液晶性高次構造の微小空間に拘束されたタンパク質溶液の結晶化が脂質高次構造に与える影響について,X線小角散乱法および蛍光顕微鏡法を用いて調べた。その結果,高次構造変化は主にタンパク質分子のエントロピーを最大にする方向に起きることが判った。 (3)アスコルビン酸結晶のパターンについて顕微鏡で観察し,形成メカニズムの特徴づけを行った。種々のパターンについて湿度を制御変数とする相図を作成した。また,成長速度の測定を行った。
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