研究概要 |
両親媒性分子が形成するリオトロピック相と呼ばれる秩序系は,流動場によってしばしば劇的な相転移や構造転移を起こし,最近特に多くの注目を集めている。申請者らはこれまでに,非イオン界面活性剤(C_<16>E_7)のラメラ相に対して,従来よりも遅いずり速度領域に注目した流動場中性子小角散乱(Shear SANS)および小角光散乱(Shear SALS)の測定を行っており、特定のずり速度において、nmスケールの構造転移(膜間の水層の排除)とμmスケールの構造変化(オニオン相形成)が起こることがわかった。このような流動場効果はこれまで報告されておらず,新しい転移ダイナミクスの発見につながる可能性が高い。本研究では(1)流動場がμmスケールの構造変化を起こす経路とこれがnmスケールの構造転移に至る経路の解明 (2)オニオン相形成との関連と転移機構の解明 (3)転移の普遍性の解明 の3点を目的としている。18年度は以下の研究を実施した。 流動場中性子小角散乱・小角光線散乱・ずり応力の温度依存性測定 これまでの測定はすべて一定温度で行ってきたが,最近オニオン相形成の条件が温度に大きく依存するという報告がある。そこで目的(2)を達成するために,これまでに行っているShear SANS, Shear SALSおよびずり応力の測定を,広範な温度およびずり速度範囲において行う。 流動場小角X線散乱(Shear SAXS)の測定 目的(1)を達成するために,SALSで特徴的なパターンが観測されたずり速度において,Shear SAXSの測定を行った。その結果,一度ラメラ膜が渦方向に配向した後,配向が弱くなることがわかり,nmスケールにおいてオニオン相形成が確認された。
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