研究概要 |
両親媒性分子が形成するリオトロピック相と呼ばれる秩序系は,流動場によってしばしば劇的な相転移や構造転移を起こし,最近特に多くの注目を集めているが,現時点ではまだ実験結果集積の段階であり,転移機構の解明にはほど遠い状態である。われわれは18年度に小角光散乱/ずり応力同時測定により,一定ずり速度下において温度上昇に伴いラメラ相がオニオン相(多重膜ベシクルのみで充填された相)に転移することを見出した。これまでに同属系で温度下降に伴うラメラ→オニオン転移が報告されているが,温度上昇に伴う転移は報告がない。そこで19年度は転移温度付近においてX線小角散乱(SAXS)/ずり応力同時測定を行い,昇温速度を変えて転移過程を詳細に調べた。その結果,昇温速度が遅い(15分毎に0.1K上昇)場合,転移に先立って膜のparallel配向が突然強くなり,直後にずり応力と繰返し距離が急増することがわかった。界面活性剤ラメ,ラ相がずり流動場によりオニオン相に転移することが15年前に見出され,その後種々の系で同様の転移が報告されているが,転移機構については不明の点が多く,今回の結果は一般のラメラ→オニオン転移の機構を考察する上でも重要な結果と考えられる。
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