研究概要 |
界面活性剤等の両親媒性分子が水中で形成するリオトロピック相は, ずり流動場によりしばしば劇的な相転移や構造転移を起こす。中でもラメラ相は, ずり流動場によりオニオン相(多重膜ベシクルのみで充填された相)に転移する現象が15年ほど前に見出されて以来, 多くの研究がなされているが, 転移過程については依然として不明の点が多い。われわれは前年度までに, 非イオン界面活性剤C_nH_<2n+1>(OC_2H_4)_mOH(C_nE_m)の一種であるC_<16>E_7と水の2成分系ラメラ相が, 一定ずり速度下で温度を上昇させることによりオニオン相に転移することを見出した。このような温度上昇に伴う転移は報告がなく, その機構は極めて興味深い。そこで20年度は転移機構解明を目的とし, 以下の成果を得た。 (1)Rheo-SAXSによる転移過程の時間追跡 転移温度近傍においてX線小角散乱/ずり応力同時測定を行った結果, ずり応力が増大し始める直前に速度勾配方向のラメラ膜の配向が強くなり, ずり応力増大と共に鉛直方向の配向が強くなることがわかった。この結果は, 多数のラメラ膜の配向促進が引き金となって同位相で波打つ "coherent buckling" が起こり, これがオニオン形成を引き起こすことを示唆している。 (2)他の同属系におけるずり応力の測定 温度上昇に伴う転移の一般性を確認するために, ラメラ相の温度領域が広いC_<12>E_5/水系およびC_<16>E_6/水系においてずり応力の温度依存性を測定した。その結果C_<12>E_5系ではラメラ→オニオン転移が見られなかったのに対して, C_<16>E_6系ではC_<16>E_7系よりも広い濃度範囲において, オニオンへの転移が示唆された。
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