研究概要 |
界面活性剤等の両親媒性分子が水中で形成するリオトロピック相は,ずり流動場によりしばしば劇的な相転移や構造転移を起こす。中でもラメラ相は,ずり流動場によりオニオン相(多重膜ベシクルのみで充填された相)に転移する現象が15年ほど前に見出されて以来,多くの研究がなされているが,転移過程については依然として不明の点が多い。われわれは,非イオン界面活性剤C_nH_<2n+1>(OC_2H_4)_mOH(C_nE_m)の一種であるC_<16>E_7と水の2成分系ラメラ相が,一定ずり速度下で温度を上昇させることによりオニオン相に転移することを見出し,昨年度はRheo-SAXSを用いて転移機構の解明を試みた。またC_<14>E_4/C_<14>E_6/(7/3)/D_2O系の粘度測定から,一定ずり速度下の温度上昇に伴うリエントラントな転移(ラメラ→オニオン→ラメラ)が示唆された。今年度はこの混合系のRheo-SAXS測定を行い,リエントラント転移を確認した。また転移温度近傍のSAXSパターンから,上部の温度上昇に伴うオニオン→ラメラ転移は,下部のラメラ→オニオン転移と逆の過程を経ることがわかり,昨年度のC_<16>E_7系の実験から示唆された転移機構は,再検討の余地があることがわかった。次に,界面活性剤の混合効果を検討するために,C_<14>E_5/水単独系の相図作成と粘度測定を行った結果,混合系・単独系共にリエントラント転移を示すことがわかった。また界面活性剤の濃度が増加すると,オニオン相の温度領域は縮小し、closed loop型の相境界を示すことが示唆された。
|