研究概要 |
AlNの禁制帯幅は6.04eVと大きく深紫外線波長領域のLEDやLD用材料として期待できる.しかし,その発光外部量子効率は数%程度にとどまっている.この原因の一つとして,非輻射発光再結合中心(NRC)密度が高く内部効率が低いことが考えられる.本研究では,NH_3-MBE成長したAlN薄膜の陰極線ルミネッセンス(CL)スペクトルと陽電子消滅γ線ドップラー拡がりの関係を調査し,深い準位とV_<Al>の関係について検討を行った. 測定に用いた試料は,c面サファイヤ上にMOVPE法で成長した2μm厚GaNテンプレート上に中間層を介してNH_3-MBE成長した約1.0μm厚のAlN薄膜である.成長層にはクラックは無く,刃状成分を持つTD密度はX線ロッキングカーブ(10-12)回折半値幅から約10^<10>-10^<11>cm^<-2>と見積もられた.これらの試料について,CLおよび低速陽電子ビームラインを用いて評価した.陽電子消滅実験では,陽電子消滅ドップラー拡がりの先鋭度を評価するSパラメーターの変化を測定した.5値は,陽電子がN空孔に捕獲されても大きく変化せず,V_<Al>およびその関連欠陥(V_<Al>-O, V_<Al>V_N等)に陽電子が捕獲されている場合にその値が大きくなる. 4.6eVの発光に対する成膜時のV/III比や基板温度に対する変化が陽電子消滅ドップラー拡がりの先鋭度を評価するSパラメーターの変化と酷似していることがわかった.よって,その起源にV_<Al>が関与していると考えられる.また,3.8eVと3.1eVに現れる発光は、その強度がV/III比の変化に対してSよりも大きく変化し,特に低温低V/III比で成長した試料において顕著となることから、それらの起源にはV_<Al>だけでなく他の要素(酸素)が関与していると思われる.
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