研究概要 |
陽電子消滅を用いることにより,半導体や金属等の空孔型欠陥を感度良く非破壊で検出・同定することができる.本年度は,陽電子消滅や光学特性,電気的特性を測定することにより,不純物をドープしたGaNおよびInN膜の点欠陥,またイオン注入により導入された不純物と空孔型欠陥の関係について調べた.RF-MBEにより成長したMgドープInNの評価を行った結果,Mg濃度が上昇しても,キャリア濃度(n型)は10^<18>-10^<19>cm^<-3>であり,かつ空孔[In空孔(V_<In>)およびその複合体]が導入されることがわかった.また,Siをドープした場合も空孔型欠陥が導入された.一方,GaNでは,フェルミレベル効果により,SiをドープするとV_<Ga>が導入されるが,Mgではその濃度は著しく減少する.InNでもフェルミレベル効果が有効であるとすると,Mgドーピングに伴い,何らかのn型不純物(酸素等)ないしは自己格子欠陥が導入され,空孔が導入されていると考えられる.MOCVD成長したundoped GaNへ室温でSi,O,Beイオンを注入することにより導入された欠陥とその焼鈍挙動を調べた.この結果,焼鈍前の主な欠陥は打ち込みイオン種によらずV_<Ga>ないしはV_<Ga>V_Nであり,焼鈍により,欠陥は表面方向へ移動しながら,クラスタリングしてゆくことがわかった.点欠陥の焼鈍特性には,打ち込み初期に導入された欠陥量が大きく影響を与える.ただし,酸素注入では,酸素がイオン注入により導入された点欠陥ないしは焼鈍中に形成された2次欠陥と相互作用することにより、酸素-空孔複合体を形成する.一方Beイオン注入では,質量が軽いことから導入される欠陥量は少なく、複合体形成の効果も抑えられるため,理想的な不純物種であることがわかった.
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