研究概要 |
本研究の目的は,陽電子消滅,時間・空間分解分光法,第一原理計算等を用いてIII族窒化物半導体の点欠陥の特性を明らかにし,同半導体の光学的特性向上に寄与することにある.減圧有機金属気相エピタキシャル(MOVPE)法により成長した高品質Al_xGa_<l-x>N(厚さ約1μm)について,低速陽電子ビームを用いて,陽電子・電子消滅γ線ドップラー拡がり測定を行った.得られた結果と第一原理計算によるシミュレーション結果と比較することにより,試料中の欠陥の同定を行った.この結果,AlNモル分率が50%を越すとxの増加に対して空孔が導入される傾向にあり,かつその空孔はAl空孔ないしはその複合体であることがわかった.以上に加えて,アンモニアソース分子線エピタキシーおよびMOVPE法によりxを0から1まで変化させた100-400nm厚のm面Al_xGa_<1-x>N薄膜を自立GaN基板に成長し,室温の陰極線励起発光スペクトルにおけるバンド端(NBE)発光ピークの偏光比を定量化した.得られた偏光比は,歪が価電子帯のエネルギー状態に及ぼす影響をハミルトニアン計算から得た半理論予測結果と良く一致した.観測された発光ピークは,NBE発光およびc面積層欠陥(BSF)に関連した発光,a面積層欠陥(PSF)に関連した発光,Al空孔に関連した発光(ないしは混晶ではAl空孔とGa空孔の可能性はある),MOVPE成長m面AlNのみに観測されるAl空孔と酸素ないしはSiドナーとの複合体,III族空孔と酸素の複合体に起因するものとそれぞれ同定した.
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