平成21年度は、平成20年度までに開発したパルス励起堆積法による低温成長技術を用いてInN、InGaN、InAlNの無極性面薄膜や半極性薄膜の成長やヘテロ構造の作製と評価を行った。具体的には、(1)III族窒化物と同じウルツ鉱型構造を有するZnOを基板上への無極性面・半極性面InAlN薄膜の成長、(2)無極性InGalN/ZnO構造における発光特性の理論的解析、(3)サファイア基板上へのc面高In濃度InGaN薄膜エピタキシャル成長を行った。 (1)において、m面や半極性面ZnO基板上へのInAlN薄膜成長を行ったところ、室温成長によってInAlN/ZnOの界面反応が抑制され、高品質なm面・半極性面InAlN薄膜の成長が可能になることが分かった。また、成長温度の低減によって、組成均一性に優れたInGaN薄膜の成長が全組成領域において可能であることを見出した。(2)において、ZnO基板上に成長した無極性InGalNの発光特性は特異な面内応力により他の基板上の場合とは明らかに異なった偏光特性を示すことがわかった。また、k・p摂動法を用いて理論的な解析を行ったところ定性的に理論と一致することがわかった。(3)において、PSD法によるc面高In濃度InGaNエピタキシャル薄膜は全組成領域において高い結晶性と極めて強い室温フォトルミネッセンスを示した。これは、成長温度の低温化によって相分離反応が抑制されたため、均一の結晶が実現したものと考えられる。
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