本提案の目的は、パルス励起堆積法と呼ばれる新しいIn系窒化物半導体の低温成長技術を開発し、極めて高品質なInNやその混晶(InAlN、InGaN)を成長し、pn制御や急峻なヘテロ接合を実現することである。InN系の材料のエピタキシャル成長には(1)分解温度が低く良質な結晶を得るための十分な原子の表面マイグレーションが行われない、(2)化学的な反応性が高く使用できる基板が格子不整の大きなサファイア等に限られる、(3)InAlN、InGaN等の混晶が熱力学的に不安定で相分離を起こし良質な薄膜が得られない、といった問題点があった。通常のInN系材料の結晶成長温度は400℃以上であるが、最近我々は、エキシマレーザーを用いてパルス的に高いエネルギーを持ったIII族原子を基板に供給することによって原子の基板表面でのマイグレーションを促進し、結晶成長の温度を室温にまで低減できることを見出した。また、この低温成長技術においては、相分離反応に必要な熱が供給されず、InAlN、InGaNといった混晶を比較的容易に成長できる。本提案では、この室温成長を再現性よく実現する結晶成長装置とそのプロセス技術を開発し、p型薄膜や他の窒化物との高品質ヘテロ接合を作製する。具体的には、先ず、パルス電子線源を用いた結晶成長装置を開発し、パルスレーザーを用いた結晶成長技術と特徴を比較する。これらの手法の内、優れた方を用いて低温での高品質InN系薄膜の成長条件を探索し、MgとSiのドーピングによってpn制御を実現する。さらに、低温成長技術を用いて急峻なInN系テロ接合作製技術を開発し、デバイス作製を担当するグループにサンプルを供給することによって新機能素子の作製を実現する。
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