波長250nm-350nm帯の紫外高効率発光ダイオード(LED)は、半導体白色照明、浄水・殺菌、医療分野、生物分野等、幅広い分野での応用が期待されている。しかし、波長が360nmより短い紫外領域においては、高輝度紫外発光材料の欠如、ワイドバンドギャップp-型半導体の欠如、ならびに高品質AIN(窒化アルミニウム)基板の欠如等のため、未だ高効率LEDは実現していない。本研究では、発光層に高効率紫外発光可能なInAlGaN4元混晶を用い、さらにAINバッファーの高品質化と高濃度p型化を実現することにより、250-350nm帯高効率紫外LEDの実現を目指している。 本年度は、InAlGaN4元混晶を用いた紫外LEDの短波長化の準備として、すでに研究の進んでいるAlGaN系材料を用いて短波長LEDの実現を試みた。サファイア上に高品質AIN結晶を成長する方法として、「アンモニアパルス供給多層成長方」を新たに考案した。この方法を用いて、貫通転位密度が低く、原子層オーダーの平坦性をもち、さらにクラックが無く、安定なIII族極性を持つAIN層の成長に成功した。刃状転位密度:7×10^8cm^<-2>程度を実現し、現在得られている最高レベルの紫外LED用AINテンプレート作製に成功した。このテンプレート上にAlGaN量子井戸を作製した結果、発光波長250-280nm帯の量子井戸において、PL発光強度が従来の50倍以上増加した。さらに得られたAINテンプレート上にAlGaN量子井戸LEDを作製し、波長222-273nm深紫外LEDのシングルピーク動作を実現した。また、波長248-273nmでは室温CW動作において1mW以上の光出力を観測した。外部量子効率は、波長248nmにおいて0.32%、227.5nmにおいて0.2%が得られた。
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