波長250nm-350nm帯の紫外高効率発光ダイオード(LED)は、半導体白色照明、浄水・殺菌、医療分野、生物分野等、幅広い分野での応用が期待されている。視界、波長が360nmより短い紫外領域においては、高輝度紫外発光材料の欠如、ワイドバンドギャップp-型半導体の欠如、ならびに高品質AlN(窒化アルミニウム)基板の欠如当のため、未だ高効率LEDは実現していない。本研究では、発光層に高効率紫外発光可能なInAlGaN4元混晶を用い、さらにAlNバッファーの高品質化と高濃度p型化を実現することにより、250-350nm帯高効率紫外LEDの実現を目指している。 本年度は、InAlGaN4元混晶及びAlGaNを用いた紫外LEDの高効率化と高出力化をさらに進めた。短波長紫外LEDで大きな問題となっている電子注入効率を改善するために、多重量子障壁(MQB : Multiquantum barrier)を導入し、MQB構造の最適化を実験的に行うとともに、MQB効果の波長依存性を明らかにした。その結果、MQB効果は短波長で効果が顕著に現れ、235nmで8倍、250nmで4倍、270nmで3倍程度の電子注入効率の向上が得られることが分かった。MQB導入により、270nmで連続出力30mW、237nmで5mWと非常に高い値が得られた。また270nmでは最高外部量子効率3.8%が得られた。さらに、本年度は新紫外LEDの光取り出し効率の向上を試みた。現状では光取り出し効率は8%程度と低いが、Al系高反射p型電極と薄いp-GaNコンタクト層を用いることにより、4倍程度の光取り出し効率の向上が可能である。今回Ni(1nm)/Al(300nm)電極により65%の反射率を実現し、また厚さ10nmのp-GaNコンタクト層を用いることで、平均で1.3倍程度の深紫外LEDの光取り出し効率の向上を実現した。
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