研究領域 | マイクロ波高温非平衡加熱の研究総括 |
研究課題/領域番号 |
18070005
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
田中 基彦 中部大学, 全学共通教育室, 教授 (80167501)
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研究分担者 |
河野 裕彦 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70178226)
丸山 耕司 理化学研究所, デジタルマテリアル研究チーム, 研究員 (00425646)
善甫 康成 法政大学, 情報科学部, 教授 (60557859)
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キーワード | マイクロ波加熱の機構 / 金属粉体の光学パラメタ / Mie理論とBruggman近似 / 時間依存密度汎関数法 / 金属酸化物の平衡状態計算 / 擬ポテンシャルの適正な選択 / マイクロ波照射効果 / 分子内Diels=Alder反応 |
研究概要 |
マイクロ波照射による加熱機構と反応促進の研究で、(1)非磁性金属粉体に対して解析理論と数値計算により光学パラメタの導出、(2)時間依存密度汎関数法(TDDFT)による原子レベルでの金属粉体の加熱機構の研究、(3)Diels-Alder反応に代表されるマイクロ波照射による分子内反応促進の効果の研究を行っている。(1)では、波長1cmのマイクロ波によりミクロンサイズの粉末の加熱を3次元理論で扱う工夫がなされている。解析の結果、表皮効果が重要で、金属粉体表面に通常存在する酸化膜(誘電体)のため、半径数10ミクロンの粉末および30GHzを超える周波数領域で加熱効率が数倍変わること、マイクロ波「磁場」で誘起された金属内電流が非磁性金属粉体加熱の原因であることが示された。(2)では、TDDFTとしてOctopusコードの整備を進めているが、UNIXシステム(日立/IBM)がFortran言語仕様の細部において、数値計算の世界で広く利用されているLinuxシステムと異なり、現在も試行錯誤で作業を行っている(構造体とポインターの計算でコンパイラにバグが存在することを指摘し修正に協力)。金属酸化物の平衡状態計算では擬ポテンシャルの選択が重要であるとの結果を得た。(3)については、安息香酸やヒドロキシカルボン酸から派生する分子の分子内Diels-Alder反応に及ぼすマイクロ波効果の実験結果を解析するため、B3LYP/6-31G*やMP2/6-31G*など分子軌道計算によって遷移状態を探索した。実験結果と比較すると、活性化エネルギーが10kcal/mol程度以下の場合には還流法でもマイクロ波でも反応が起きており、活性化エネルギーが10kcal/mol以上の場合は、マイクロ波を照射しないと反応が進まないと言うことが分かった。この反応性の差がマイクロ波効果によるものなのか、分単位の長時間シミュレーションが可能なモデル系を構築して調べる予定である。また、分子間反応で見いだされているマイクロ波効果の有無と双極子モーメントの大きさとの相関はこれらの分子内反応では見いだせておらず、これは、分子内ダイナミクスに及ぼす特異なマイクロ波効果が存在することを示唆している。以上のマイクロ波による加熱機構と反応促進に関する理論研究は来年度も継続して行う。
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